2015年末にストレスチェック制度が始まって10年が経ち、今では義務化の対象である従業員数50人以上の事業所の約9割で実施されている。
にもかかわらず、メンタル不調を抱える社会人は減少しておらず(参考:年間「約7.6兆円」の経済損失 「心の不調」による休職が増えている理由)、効果が十分に発揮されているとは言えない状況だ。ストレスチェックの際に全て“本音”で回答している人は35.3%にとどまり、高ストレス判定の経験者の約半数しか具体的対処をしていないという調査結果も出ている。
2028年にはストレスチェックの義務化対象が50人未満の事業所にも広がる。せっかくやるなら、ストレスチェックを意味のあるものにし、不調者を減らしたい。そのためにはどうしたら良いか。企業と社員自身、それぞれの向き合い方がカギを握る。
そもそも、ストレスチェックはなんのためにあるのか。厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」によると、主な目的はメンタルヘルス不調の“未然防止(一次予防)”であり、ストレスの程度を把握することで本人の気付きを促すこと、職場改善につなげて働きやすい職場づくりを進めることが目指されている。
通常、ストレスチェックの実施は産業医や外部機関に委託され、個人の結果は本人に直接通知される。それとは別に、職場や部署単位で集計・分析したもの(以下、集団分析結果)を企業が受け取り、職場の改善に生かすことも努力義務とされている。
集団分析結果を踏まえて職場の改善が進めば、社員のストレスが自然と軽減するケースもあるだろう。しかし、ストレスの要因は人によってさまざまであり、適切な対処方法も異なる。そして、個々人のストレスチェックの結果は、本人が申し出ない限り上司や人事担当者などが知ることはない。そのため、ストレスチェックは社員本人が自ら役立てようという意識がないと、機能しづらい制度だと言える。
それと同時に、社員のストレス状況が改善したり、働きやすい職場が実現したりすれば、組織全体の生産性向上も期待できる。ゆえに、ストレスチェックの活用は企業の利益にもつながるだろう。つまりストレスチェックとは、社員と会社がおのおの「これを活用しよう」という前向きな意思があるときに、双方にとって効果が期待できるものでもある。
冒頭で紹介したアンケート調査は2026年2月にSmart相談室が実施したもので、過去3年間にストレスチェックを受検したことがある会社員430人を対象としている。
それによると、ストレスチェックに「全て本音で回答している」人は35.3%だった。それ以外の約65%は、何かしら正直でない回答をしていることになる。
本音で回答しない理由はさまざまだ。しかし、特に以下のような回答からは、自分が高ストレスな状態にあるかもしれないと認識しつつ、それが判定結果として示されると面倒なことになる、異動や評価などで不利益を被る、といった不安や不信感がうかがえる。
誰だって、ストレスの高い状態にさらされているのはしんどい。それが軽減するきっかけになるのなら、ストレスチェックも歓迎すべきものだろう。しかし、そうは思えないという人が多いようだ。
これは「社員の健康に問題があれば十分なケアをする。それによって不利益な扱いはしない」という会社からのメッセージが伝わっていないか、会社の対応自体が形骸化しているかのどちらかが原因だと考えられる。
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