そうした意見の多くは、「ブランドの安売り」「出稿側のメリットがない」といった点から語られている。
前者においては、これまでYahoo!ニュースが築いてきた「ニュースサイトの王者」の地位が、記事広告があふれることにより揺らぐのではないかという心配から来ているのではないか。
後者は、大量の記事が配信されている媒体ゆえに、「すぐに埋もれてしまうのでは」といった懸念だろう。結果的に想像よりもPVが伸びず、広告主が思い描いていた露出効果を得られないのではないかとの見方だ。
しかし筆者は、このような指摘を「あくまで取り越し苦労にすぎない」と考えている。ネットニュース編集者として、これまで10年以上の経験を踏まえると、今回の動きは「起きるべくして起きた」と感じるのだ。
具体的に言えば、その兆しは7年前から見えていた。LINEとヤフーが経営統合を発表した2019年、新会社は「AIテックカンパニーを目指す」と明言していたからだ。当時の段階で今回のサービスを予測することは難しかったものの、AIをメディア事業へ本格的に取り込んでいく方向性自体は十分に読み取れた。当時はメディア事業に、どうAIを活用するかまでは示されていなかったが、ここに来てようやく実現が始まったと言えるだろう。
もっとも発表当時は、コロナ禍の直前であり、「おうち需要」によるリモート技術の進化は予想できなかった。また、OpenAIがChatGPTを公開する3年前であり、まだ「生成AI」なる単語も一般的ではなかった時代の話である。
そんな段階からAIの可能性を見いだしていたLINEヤフーであれば、メディア事業であるYahoo!ニュースにも、その技術を応用しようと考えてもおかしくない。実際に編集部による人力の記事選定に加えて、アルゴリズムによるレコメンド機能は積極的に導入されていった。
AIがヤフートップなどに掲載する記事を選定するようになれば、その先に記事制作工程へのAI活用が広がることも自然な流れだ。さらにAIによって記事化のコストが大きく下がれば、企業が発信する一次情報をAIが整え、そのままニュースとして流通させる仕組みも現実味を帯びてくる。つまりは「媒体を通さない産地直送の情報流通」だ。プレスリリースの自動生成と掲載という仕組みは、遅かれ早かれ実現していたと考えられる。だとすればむしろ、実装としては遅かったと言えるかもしれない。
そのような前提に立ったとき、気になるのが批判的な声だ。Yahoo!ニュースのAI導入については、先ほども言ったようにLINEヤフーがAI傾倒を進めると決めた以上、ある程度の導入と、それによるブランドパワーの変化も当然予想できたのではないか。
そして、後者の「広告主側のメリット」については、少なくともブランド認知を目的とする企業にとっては、掲載されたという事実だけでも一定の目的は果たせている可能性がある。露出したい側にとって、すでにニュースメディアは“Yahoo!ニュースに載せるパイプ”でしかなく、それ以上の価値を提供できない媒体側に課題が残されているのではないかと感じるのだ。
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
スマホも衛星通信もあるのに、なぜ「業務用無線機」はなくならないのか 売上高過去最高の無線機メーカーに聞く
中小企業は「消去法」で50代を採用する 早期退職の前に知るべき現実
退職一時金を「廃止」する会社は増えるのか 優秀人材が逃げる給与シフトの成否
病院内のカフェ、なぜ「タリーズ」が多い? 100店舗展開を支える運営戦略Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング