実は、実務能力の高いプレーヤーが上司になった途端に陥る機能不全には、典型的な3つのパターンがある。
部下の進捗に少しでも遅れが見えると「自分がやった方が早い」と業務を取り上げてしまう。短期的には効率的だが、部下は失敗から学ぶ機会を奪われ、指示待ち人材と化す。
自力で困難を乗り越えてきた上司ほど、自分の水準を「当たり前」と設定し、その水準に達しない部下にいら立つ。「俺と同じようにやるべきだ」という、再現性の低い精神論に終始する。
プレイングマネジャーの場合、自らの数字や専門性の維持を優先し、育成や進捗管理といったマネジメント業務を事実上放棄する。マネジメントへの苦手意識からプレーヤー業務を優先してしまうケースもあれば、業務過多でマネジメント業務まで手が回らないケースも少なくない。
いずれの機能不全も「マネジメント業務」の重要性やそのノウハウを理解せず、ろくに実践しないことで起きる。あいさつや承認、傾聴といった関係性構築につながる対人業務を「非生産的な雑務」と判断してしまう。逆に、特定の部下だけを一面的な要素で評価してしまい、不公平感をまん延させるケースもある。
管理職がマネジメント業務の優先度を下げることは部下の心理的安全性を損なうことになり、離職の可能性を徐々に高める。
優秀なプレーヤーが管理職になると「スキルの非連続性」という事実が見落とされがちだ。
経営学者ロバート・カッツが1955年に提唱した「カッツモデル」によれば、現場層に求められるのは業務遂行のためのテクニカルスキルだが、プレーヤーから管理職への移行期には、テクニカルスキルから対人関係を担うヒューマンスキルへと求められる重心がシフトし、さらに上の階層では大局を捉えるコンセプチュアルスキルが必要になる。
つまり、プレーヤーから管理職へ移行することは、昇進というより「これまで育ててきたプレーヤーとしての武器を封印し、扱ったことのない武器で戦う、別職種への転職」に近い。
部下が辞めていく現象は、上司個人の資質の問題とは別に、全く異なるスキルを何の訓練もなく突然求めるという、企業の人事制度が抱える構造的な課題に起因している。
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