「新規事業のアイデアがまとまらない」「ブレインストーミングで役員の時間を拘束し、目に見えない人件費ばかりが膨らんでいく」──。
多くの企業が悩むこんな課題に、市場調査の老舗が新たなサービスを提示した。独立系総合マーケティング調査機関として、全産業の市場データを蓄積してきた矢野経済研究所(東京・中野区)によるAI活用型の新規事業アイデア創出支援サービス「AIDEL」(アイデル)だ。
「30分で100のアイデア提案」を掲げる同サービスは、同研究所が持つ膨大な市場データと、米Anthropicの高度なAIモデル「Claude」を融合させたものだという。膠着(こうちゃく)しやすい新規事業開発のプロセスを効率化し、企業の意思決定を加速させる新ソリューションの展望について、矢野経済研究所のトップらに聞いた。
水越孝(みずこし・たかし)矢野経済研究所 代表取締役社長。1985年、慶應義塾大学卒。1989年に矢野経済研究所入社。2005年に代表取締役社長に就任、2018年より一般社団法人地域創生インバウンド協議会監事、現在に至る。大手企業の事業戦略や新規事業の立ち上げに参画、スタートアップや中小中堅企業の成長支援、M&Aの実績も豊富。芝浦工業大学非常勤講師、拓殖大学客員教授、中野区産業振興推進機構理事、矢野経済信息諮詢(上海)董事長等を歴任(以下撮影:アイティメディア)AIDELは、矢野経済研究所が長年発刊してきた市場調査レポートや共同通信の配信記事、特許情報などをAIが瞬時に参照し、ビジネスアイデアを自動的に提案するシステムだ。システムの設計・構築・運用や保守・監視は、金融工学とITの融合やビッグデータ分析に強みを持つクォンツ・リサーチ(東京都港区)が共同開発パートナーとして担っている。
開発を担当した矢野経済研究所未来企画室の戸間翔伍上級研究員は「顧客企業からアイデア発想の要望が増え始めた2023年頃から(AIDELの)構想はありました」と明かす。
「当時はまだ生成AIが本格的に普及する前でした。事業計画を役員に提出する前段階のブレストに膨大な時間を費やし、企業の役員などを長期間にわたって拘束するなど『隠れ人件費』がかなり膨らんでいることが大きな課題だったのです」
また、これまでの新規事業開発では、アイデアを発想するのに、専門性を有する高度なフレームワークが用いられがちだった。しかし一般の社員にとっては、専門知識やリテラシーの面でハードルが高く、心理的な抵抗感が強いという課題もあったという。
結果として、一部の専門担当者や経営層だけに負担が集中し、ブレストの泥沼化を招いていた。今回、AIDELに最先端AIの高度な自然言語処理を組み込んだことで、専門知識や経験のない一般の担当者であっても、直感的に質の高いアイデアを量産できる環境が整ったという。
矢野経済研究所の水越孝社長は「企業はアイデア創出のための議論に膨大な時間をかけていましたが、このサービスを使えば、その時間が節約できます。担当者は、もう一つ上の段階の問題解決、すなわち戦略の具体化や実行に注力できるようになります」と、業務効率化の利点を強調する。
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