EY Japanの大平洋一パートナーによると、WTOの枠組みでは忌避された保護主義が世界的に復権し「自国の産業を守ることが当たり前」になるという。
多角的な枠組みの代わりにマイクロな二国間交渉が積み上がるとき、貿易環境は不安定化する。そこで「予測しないと大変なことになる」と大平パートナーは語る。
日本企業にとって、対応の選択肢は一つではない。米国に追随してEUが中国に対する関税を引き上げようとする機運は、日本勢にとっては欧州市場攻略の機会となるだろう。米国への工場誘致は関税コストを下げる根本策になる上、州や郡単位の誘致奨励制度を活用すれば投資のハードルも下げられる。
グローバリゼーションにより、原材料から最終製品に至るまでのサプライチェーンは複雑で広範囲なものとなった。その結果、事業規模が小さく、海外に直接展開していない企業でも関税の影響を受けるようになった。
例えば、マレーシアのペナン島で梱包事業を営む筆者の知己の経営者は、主要顧客である中国の太陽光パネルメーカーがトランプ関税のあおりを受けて、対米輸出を減らしたことから、売り上げの大部分を失ったと嘆く。
複雑な最終製品を組み立てて輸出する場合、どこで何の部品を組み込むかで産地が決まり、関税コストも決まる。関税リスクを抑え、インセンティブを最大限活用するには、上流から下流までサプライチェーンを監視しながら、次の一手に備えた複数のシナリオを準備しておきたい。
しかし、ミスのない通関事務を使命としてきた社内の関税チームには、そこまでの戦力が定量・定性的に足りないことが多いだろう。「関税問題にグローバルな視野で俯瞰的に取り組むには、各国のローカル事情に通じた専門家が必要だ」と大平パートナーは語る。グローバルファームを専門家として招くことも有効な選択肢だ。
違憲判定されたIEEPAに基づく関税については、還付が進んでいる。
トランプ関税はトランプ政権の後も続くだろうか? ハーデン氏と大平パートナーは共通して、日本やEUなど同盟国への攻撃的なスタンスは軟化する可能性があるものの、WTO時代の多角的な貿易環境は基本的に戻らないと読む。
国家間対立や保護主義の武器として使われ続ける以上、関税は氷解どころか、根雪のように残ると予想される。この認識に立つとき、企業にとって関税対策はもはやオペレーショナル(日々の業務)にとどまらず、戦略的な意味を持つ。
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