では、企業はどうすればいいのか。重要なのは、「辞めない人を採用する」ことではなく、入社前の段階で、企業と求職者が互いを正しく理解することだという。
企業側は、給与や休日、福利厚生といった条件だけでなく、実際の仕事内容、求められる役割、一緒に働く人、仕事の難しさや向き・不向きまで具体的に伝える必要がある。そして、入社後も「採用したから終わり」ではない。
企業側の調査では、定着率向上のために実施している施策と、「最も効果があった」と感じる施策のどちらでも、「直属の上司との定期面談」が最多だった。
「採用時の情報開示と、入社後のコミュニケーション。この2つがそろって初めて、早期離職を減らせる」(小用さん)
「早期離職をゼロにする」ことだけを目標にすると、企業側は「どうすれば辞められないか」という発想になりがちだ。しかし本来重要なのは、入社前に「この会社で働きたい」「この人と働きたい」と双方が納得できる状態をつくることだという。
採用市場が売り手優位となり、人材獲得競争が激しくなるほど、企業は自社を「良く見せる」必要に迫られる。だが、入社後の現実とのギャップが大きければ、採用時に伝えた魅力が、かえって早期離職の引き金になる。
「良いことを伝える採用」から、「良いことも悪いことも含めてリアルを伝える採用」へ。早期離職による約640万円の損失を考えれば、採用時の情報開示を見直すことは、単なる人事施策ではなく、企業の生産性や経営そのものにかかわる問題になっているといえそうだ。
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