2000億円集めた「みんなで大家さん」、集団訴訟も返らぬ出資金 債権回収の鉄則、企業は“他山の石”とせよ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2026年09月20日 08時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

“全額回収”にこだわると沼にはまる 債権者はどう動けばいい?

 「債権回収」は企業運営にとっても押さえるべき重要なテーマだ。企業間取引でも、これまで多くのトラブルが起きてきた。まずは、債権回収における落とし穴について考えていこう。

 債権回収の実務者が必ず気にするのが、偏頗弁済(へんぱべんさい)の論点である。

 破産法162条は、債務者が支払不能になった後、または破産手続開始の申し立て後に、特定の債権者だけが弁済や担保の供与を受けた場合、その債権者が支払不能を知っていたときは、破産管財人がその弁済を否認できると定めている(参照:色川法律事務所「破産法における否認権」)。

 つまり、相手が払えない状態だと知りながら回収した金は、その後に破産手続が始まれば、管財人に引き上げられ、債権者の間で公平に案分されてしまう可能性があるわけだ。

 ただし、条文の要件は「支払不能の後」であって「行政処分の後」ではない。支払不能とは、弁済期の来た債務を一般的かつ継続的に払えない状態を指す。

 2024年6月の時点で、都市綜研は分配金も解約返戻金も払っていた。このように、解約に応じて出資金を返すのは契約上の義務であり「義務のない弁済」に当たらない可能性が高い。

 さらに破産法166条は、破産申し立ての日から1年以上前の行為について、支払停止の後になされたこと、または支払停止を知っていたことを理由とする否認を認めていない。

 2024年に出資金を回収した債権者を否認するには、管財人が「2024年時点ですでに支払不能だった」ことと「債権者がそれを知っていた」ことの両方を立証しなければならない。会社が約2000億円の預かり資産を掲げて営業を続けていた時期に、それは容易ではない。

 つまり、2024年6月の処分直後に解約を申し出た人たちは、実際に回収できていれば、否認されるリスクは相対的に小さいということになる。

 否認のリスクが立ち上がるのは、賃料未収が始まった2025年4月以降、そして成田の土地を失った2025年11月以降となるだろう。支払不能の兆候が積み上がるほど、その時期に受け取った弁済は「他の債権者より先に取った」ものとして否認されやすくなる。

 早く動けば回収できる原資があり、しかも否認されにくい。遅く動けば、原資は減り、取れたとしても否認され得る。全額にこだわるほど沼にはまってしまうのが債権回収の怖いところだ。

“逃げ時”を逸した債権者に残された道

 では、初動で逃れるタイミングを逸した債権者はどうするか。

 支払不能が疑われる段階で債務者から直接回収すれば偏頗弁済のリスクがある。この時点で裁判で勝っても返す原資が残っていない。

 この板挟みを抜ける方法の一つが、債権を売ることだ。

 債権譲渡は、債務者から弁済を受ける行為ではない。第三者に自分の債権を売り、その第三者から対価を受け取る取引だ。

 債権の買い手は一般に、債権総額の数%から1〜2割程度で買い取る。これは、回収の不確実性と自身が受ける弁済が否認されるリスクを織り込んで値付けされるもので、みんなで大家さん案件の債権を譲渡するといくらになるか断定することはできない。

 債権の売り手は、不確実な将来の全額を手放し、確実な現在の一部を手にして損失を学びに転換するという心の切り替えが必要だ。

 ちなみに、今回のようなB2C向けのサービスでは実現できない対策だが、一般的なお金の貸し借りであれば「担保を取ること」も重要だ。

 担保権の実行は、破産手続の外で行える。相手に対して自社も相互に債務を負っていれば、相殺によって回収に相当する効果を得られる場合がある。

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