FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。
「みんなで大家さん」――世間を騒がせた不動産投資商品の名前だ。複数の投資家から少額ずつ資金を集め、不動産を購入し、得られた賃貸収入などの収益を分配する。同商品は、年7%の高い利回りをうたって多額の資金を集めていた。
大阪府は9月1日、みんなで大家さんの営業者である都市綜研インベストファンド(大阪府吹田市、以下「都市綜研」)に対する「不動産特定共同事業法」に基づく事業許可を取り消した。東京都も同日、子会社で同商品の販売代理人を務めていたみんなで大家さん販売(東京都中央区)の許可を取り消している。
出資者への適切な説明がなされていない、大幅な債務超過に陥っている、償還が遅延している、過去の行政指示を実行していなかった点などから、許可基準を満たさないという判断に至った。大阪府は「事業参加者への損害を速やかに解消することが期待できない」と説明し、東京都は「被処分者の行為は情状が特に重いと認められる」としている。
みんなで大家さんを巡っては、出資者が出資金の返還を求める集団訴訟を起こしている。3月26日に大阪地裁が出資者3人に約1714万円の全額返還を命じ、6月5日には84人に約4億5500万円、6月10日には60人に約3億5000万円の全額返還を命じた。3件とも出資者側の全面勝訴である。
だが、原告の正当性が証明されることと現金が実際に手元に戻ることは全く別の問題だ。ない袖は振れない。都市綜研には、判決通りに払う原資が残されていない可能性も考えられる。
この点で、みんなで大家さん案件は、取引先に対する「債権回収不能リスク」が高まった時、債権者は何をすべきなのかを考えるための教科書的な題材となり得る。
みんなで大家さんの主力商品が、成田空港の近隣で計画されていた開発プロジェクト用地を扱う「シリーズ成田」だ。想定利回りは年7%、出資金は1口100万円だった。同シリーズを中心に、2025年11月時点で約3万8000人から約2000億円を集めたとされる。
2024年6月17日、東京都と大阪府が業務の一部停止処分を出した。東京都が処分を公表してから約24時間で、成田商品の出資者約400人が解約を申請。その額は約28億円に上った。大阪府でも公表後24時間で、約470人が契約上の地位の譲渡や解約を申し出たことが分かっている。
その後も、投資商品の販売は続いた。2025年4月1日以降、テナントであるグループ会社からの賃料が入っていないにもかかわらず複数の商品を販売。出資者に賃料未収を明かしたのは7月31日だった。大阪府は、この期間に同社が6億円以上を集めたと認定している。
2025年11月末、成田空港会社は、シリーズ成田で扱う開発用地の4割にあたる土地の賃貸借契約を終了した。「造成工事の遂行能力を確認できなかった」というのが理由である。預かり資産約2000億円のうち1500億円超を占める中核事業の土台が消えた。
同月には、全国の出資者1191人が都市綜研に対して出資金の返還などを求めて集団訴訟を起こした。2026年2月10日に、都市綜研は集団訴訟の原告側に、手数料を差し引いた出資金を分割で全額返還する和解を申し出た。
しかし、原告側は「分割では途中で支払いが滞り、全額が返還されなくなる恐れがある」として、和解を拒否したとされている。そこから約半年後に、会社は事業許可を失い、新規の募集と販売ができなくなった。
原告の懸念通り、分割払いは途中で止まっていた可能性が高い。ただ、全額返還の判決を確定させるまでの7カ月で、都市綜研の資産が削られていった。判決で確定した「全額」は、確定した時点で残っている資産からしか払われない。
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