“何でもLLM”では生産性を上げられない フィジカルAIの「分業」に学ぶ、AI導入のヒント(1/2 ページ)

» 2026年09月29日 11時19分 公開
[古田拓也,ITmedia]

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筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士

FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経て株式会社X Capitalへ参画。


 生成AIブームの「次」としてにわかに注目を集めているのが「フィジカルAI」だ。

 フィジカルAIは、ロボットなどの機械を通じて現実の世界で自律的に物をつかみ、運び、組み立てるAIを指す。米NVIDIAはヒューマノイド(人型ロボット)のリファレンスデザイン(参照設計)を発表しており、AIの主戦場はデジタルの世界から物理空間へ広がりつつある。

フィジカルAI時代が到来しようとしている(ゲッティイメージズ)

 フィジカルAIは大規模言語モデル(LLM)がロボットの全身を動かしていると想像しがちだが、実際にはAIが担う範囲は限られている。

 フィジカルAI時代、導入を検討する企業がまず考えるべきことは何か。

フィジカルAIにおける分業

 公開されているヒューマノイド向けAIの設計を見ると、ロボットの中の役割は大きく2つに分担されている。主にカメラの映像や言葉による指示を理解し、「何をするか」というタスクの計画や意思決定を行う、いわゆる「大脳」の部分をマルチモーダルAIなどが担う。

 一方で、実際に身体や関節をリアルタイムに動かす「小脳」の部分は、従来の機械制御プログラム(モデル予測制御など)に加え、現在はシミュレーションで鍛えられた「強化学習などの動作AI」が融合して担っている。役割が分かれている理由は、それぞれに求められる計算スピードと柔軟性が根本的に違うからである。

 「何をするか」の判断は、最新のAIモデルでも速さには限界がある。その代わりに、見たことのない状況やあいまいな指示に対応できる柔軟さが期待される。一方で、ロボットの手足を動かすときに大切なのは、センサーからの情報に一瞬で反応し、いつでも正確に動くことだ。

 重い物を持ったときは、その場で電気の強さを変えてパワーを調整しなければならない。この判断をいちいち頭脳のAIに相談していては、動きが遅れたり不安定になったりする。そのため、ここでは「反射神経」のように一瞬で判断できる、あらかじめ決めたルールや、動作特化型の高速な制御AIが必要になる。

 臨機応変さが求められる部分には大容量のAIを使い、速さと確実さが求められる部分は現場のセンサーや専用の制御システムで固める。この切り分けは、NVIDIAに限らない。

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