余談だが、今回の買収には、因縁めいた背景もある。
2005年、フジテレビジョンがニッポン放送の経営権獲得を目的とする公開買い付けを進める中、堀江貴文氏が率いていた当時のライブドアは、2月8日に東京証券取引所の立会外取引を使ってニッポン放送株を大量に取得し、保有比率を約35%に引き上げた。ライブドアは、放送局のWebサイトをポータル化してシナジーを得ることや、フジサンケイグループとの業務提携を見据えていることを明らかにしていた。
この攻防で、フジテレビ側に立ったのがソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)だった。同社は3月24日、フジテレビジョンと共同で、コンテンツ・メディア関連企業に投資するベンチャーキャピタルファンドを設立すると発表した。
また、ニッポン放送が保有するフジテレビ株を株券消費貸借の形で借り受けることで、一時的にSBIがフジテレビの筆頭株主になっている。フジテレビ側の友好的な支援者「ホワイトナイト」になったのだ。率いていたのは、現在もSBIグループの代表を務める北尾吉孝氏だ。騒動は4月18日、フジテレビによるニッポン放送の完全子会社化に関する基本合意の発表で収束に向かった。
その後、livedoorの事業は持ち主を変え、LINEの手に渡った。LINEは2022年、「ライブドアブログ」「livedoor ニュース」「Kstyle」を中心とする事業を新設の完全子会社に承継させ、その全株式をミンカブに譲渡した。現在のライブドアはこの会社を前身とし、堀江氏が率いた会社そのものではない点については留意したい。
それでも21年前に堀江氏のライブドアが掲げた構想の舞台となったブランドを、当時フジテレビ側に立った北尾氏のSBIが、今度は金融と組み合わせるために手に入れようとしていると考えれば、なんとも数奇な巡り合わせといえる。
今回の再編は、金融業界にとどまらない深い示唆を含んでいる。
オウンドメディアや会員サービスを持つ企業は、その価値を広告収入やページビューだけで測りがちだ。しかし自社商品を持つ企業にとっては、「顧客獲得コストをどこまで下げられるか」「既存顧客に別の商品をどれだけ買ってもらえるか」という物差しのほうがはるかに重要になる。
逆に、どれほど魅力的な顧客接点を持っていても、それを収益につなげる自社商品がなければ、メディアの維持・拡大そのものが重荷となってしまう。
メディアとデータ、顧客接点と商品――どの資産を誰が組み合わせれば、価値が最大化するのか。SBI、NTTデータ、ミンカブによる一連の再編は、その問いに対する一つの解答といえる。
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