AIによって削減した時間の振り分け先を開示している企業の例もある。
パナソニックグループのITサービス会社であるパナソニック コネクトは、自社開発したAIツール「ConnectAI」を利用している。7月29日の発表で、2025年度のAI活用による削減時間が前年の2倍となる78.8万時間に上り、これは総労働時間の3.4%に当たると説明した。
ConnectAIの利用回数は前年比1.6倍の361万回、月間ユニークユーザー率は前年から12ポイント増の61%だった。利用回数を前年比で示すことで、定着が進んでいることを提示している。
同社は、2030年に総労働時間の10%をAIで削減することを目指し、生み出した時間を顧客への提案活動や新たなサービスの創出に振り分けるとした。図面や設計仕様の情報を照合する業務では、AIエージェントの利用も始めているという。削減時間の行き先とAIを組み込む業務の明示は、定着からスループットへの発展を確認できる事例として参考になるだろう。
英McKinsey & Companyが8月に公表したレポート「The state of AI in 2026」(2026年のAIの現状)では、AIの利用が利益に何らかの影響を与えたと答えた回答者は37%で、前年からほぼ横ばいだった。
AIで利益の5%以上を生み、大きな価値を得たと答えた企業は全体の6%にとどまる。高い成果を出した“優秀な組織”の4分の3近くは「AIの利用に合わせて業務の流れを根本から作り直した」と答えていた。
成果を出す企業ほど、作業の短縮ではなく業務の流れ、つまりスループットを意識した改革に力を入れているのだ。
同じ調査で、AIエージェントを本格的に展開していると答えた大企業の回答者は40%と、前年の27%から13ポイント増えた。AIが「人の作業を手伝う道具」から「作業そのものを担う道具」に変わるほど、ある作業単位の削減時間を測っても、それ自体は成果の物差しとみなされにくくなっている。
この点について日本企業は、まず効果を測るところでつまずいていることも事実だ。PwC Japanグループが6月に公表した6カ国調査では、生成AI活用の効果を「まだ評価できていない」とする日本企業は13%で、米国は0%、他の国もおおむね数%で推移する中で突出していた。
AIの効果を疑う経営層がいる時に、いきなり「スループット」を意識して提言をしても話がかみ合わない可能性が高い。
そのようなケースであれば、まずAIで個別作業が大幅に削減されるという成功体験をアピールすることが重要だ。これと同時に、スループット向上の方針まで提示できれば手強い上層部であっても納得感を引き出しやすいのではないだろうか。
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