タカラジェンヌ→「宝塚ホテル」支配人に マネジメントに生きた「劇団で培った2つの力」とは?(4/4 ページ)

» 2026年11月06日 07時00分 公開
[シカマアキ,ITmedia]
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100年の老舗だからこその課題 「地域調和」という次の挑戦 

 一方「宝塚大劇場オフィシャルホテル」としてのブランディングを進めた結果、新たな課題も出てきた。旧ホテル時代から親しまれてきた地元・宝塚市民との間に、心理的な距離が生まれてしまったのだ。

 宝塚南口駅前にあった旧ホテル時代から一転、大劇場のすぐ隣に移転した立地の変化も、地元住民にとっては「ファン専用の場所になってしまった」という置き去り感につながり、足が遠のく一因になっていたという。

 「そこで100周年の節目に、市民限定の割引プランや旧ホテルのレストランの復刻メニュー、お子さま向けの体験イベントを企画しました。すると、昔なじみのお客さまが戻ってきてくださいました。実は、地元の皆さまは『月曜日が劇場の休演日』と分かっているので、あえて月曜日に食事をしに来られるんです。オフィシャルホテルとしての顔と、地元に寄り添う老舗としての顔。この2つの調和こそがこれからの100年に必要なテーマです」

photo 宝塚ホテルの客室廊下には、旧ホテル時代のレストランなどの写真を飾っている

 現在はホテル人として働くかたわら、元舞台人として、元タカラジェンヌのセカンドキャリアにも問題意識を持っている。宝塚歌劇団で得たスキルや経験をその後どう仕事で生かし、どのような人生を送るべきなのか――。憧花氏は最大の課題を、こう提言する。

 「宝塚歌劇団出身者は、一つの目標に挑む忍耐力や土壇場での柔軟性、やりきる意志がとても強いです。ただ一般企業に入ってみて、一番困るのは『お金の回り方』、つまり利益の構造を知らないことにあると思いました。何にいくらかかり、どれだけ集客すれば赤字にならないか。宝塚歌劇団の舞台に立った人間はそんなことは考えたことがなく『天からお給料が降ってくる』と思っている人もいるくらいです。自分の仕事がどう会社の利益になり、ビジネスが成り立っているか。この仕組みさえ理解できれば、セカンドキャリアに悩む元舞台人やアスリートは、企業社会でも間違いなく絶大な力を発揮できます」

 歌に踊りに芝居に懸命に打ち込み、観劇に来るファンに喜ばせることをひたすら考えていたタカラジェンヌ時代。憧花氏自身も、ホテルの仕事をおおよそ理解できるまでに3年ほどかかったという。歌劇やファン、また地元との間に立つ“架け橋”として、今後も活躍が期待されている。

 コンセプト「夢のつづき」を掲げ、ハード面でもソフト面でも世界観を持続させる宝塚ホテル。100年の歴史を背負いながら、劇場の熱狂と地域の日常を調和させる試みは、観光産業へのヒントを示している。

photo 「歌劇と地元との調和。ある意味、唯一無二の面白いホテルだと思います」と語る憧花氏。歌劇ありきの街でありつつ、地域社会とのつながりという“2つの顔”を持つホテルの支配人として今後も尽力していく

著者紹介:シカマ アキ

大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、

読売新聞の記者を経てフリーランスの

ジャーナリスト・フォトグラファーとして活動中。

主な取材分野は、旅行、飛行機・空港、官公庁や自治体、スポーツなど。

国内外で、雑誌やWebなど向けに取材、執筆、撮影などを行う。

ニコンカレッジ講師、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。

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