他地域では見送りが続くのに、養父市がライドシェアを導入できたワケ
やぶくるの営業エリアである大屋地区・関宮地区は、既存のタクシーが拠点を置く鉄道駅(JR山陰本線・八鹿駅)のある市街地から10〜20キロほど離れており、地区内の近距離移動でタクシーを呼ぼうにも断られがち、という悩みを抱えていた。
過去には「地区内のタクシー利用500円」を掲げて両地区にタクシーを配置する実証実験を行ったものの、利用率の低迷もあって、3カ月で100万円以上もの損失補填を必要とする失敗に終わっている。
近距離利用でタクシーを呼びづらい両地区の移動手段として、ライドシェアの検討が始まったものの、市民ドライバーが通常の免許(一種免許)で送迎をすることから、市議会では「サービス面では『安かろう・危なかろう』ではないのか?」という声も挙がった。また民間バス・タクシーとの競合も懸念され、各タクシー会社や兵庫県のタクシー業界、バス会社も一貫して反対を貫いていたという。
しかし、養父市の場合はバス・タクシー業者も含めて協議会を開き、既存のバス路線がある駅や中心部は当初からエリアに含めず、タクシーの配置が難しい2地区内に運行を限定。また、地元のタクシー会社が予約を請負い、手数料(「やぶくる」の場合は2社で売り上げの5%)を受け取るというかたちで、一定のメリットも生まれるようにした。
なお「Uber」などの海外アプリには対応しておらず、当時の市議会・協議会の資料を見ても「目指すのは海外のライドシェアではなく、養父市のライドシェアである」という説明が、市長や担当部署から行われている。
同時期に「国家戦略特区」の取り組みとして検討を行っていた富山県南砺市・秋田県仙北市などは導入に至らなかったが、養父市は独自の「養父市型のライドシェア」ともいえる体制を築き、「自家用有償輸送」(道路運送法の特例)の枠組みで、18年の「やぶくる」サービス開始に漕ぎつけた。
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