各地のライドシェア導入 状況は?
養父市以外にも市民ドライバーが送迎するライドシェアを導入する地域は増えている。その中でも、海外版のライドシェアに最も近いのは、「Uber」のタクシー配車用アプリで予約・支払いまで一括して行える、京都府京丹後市(旧・丹後町エリア)の「ささえ合い交通」だろう。このサービスの主要エリアである旧・丹後町は海岸線の全域がユネスコ指定の「山陰海岸ジオパーク」でもあり、海外からの観光客も多い同町ならではの対応だ。
また、北海道天塩町は長距離ライドシェアのマッチングサービス「notteco」と提携、相乗り型のライドシェアを導入している。サービス開始当初は「インターネットでの申し込み手段が分からない」といった声も多く、利用者が伸びなかった。しかし「まずはお電話ください」というチラシを投下、サポートセンターでの案内を行ったところ、利用者が予約操作に慣れ、利用が急増したという。
こうして事例を調べていくと、ライドシェアはいかにも斬新な取り組みに見えるが、実際には「地元の人が、移動に困った人々を送り迎えする」という事例はもともとよく聞く話で、ある意味“地方あるある”でもある。ただ、その多くは地元の方々の親切心頼みで、報酬はあっても薄謝か現物(みかん・おせんべいなど)といったことも珍しくない。
また、頼む側の高齢者も遠慮してしまい、近所の人々が心配して「病院に行かなくていいの?」と聞きに来た頃には、体調が悪化して……という場合だってある。
ライドシェアが導入されれば、頼む側も「サービスの利用」であるため、心理的な負担は少ない。そして、これまで親切心・地域貢献への思いによるボランティア頼みであったドアtoドア送迎が可視化され、地域のために汗を流す人々が、わずかでも正当な報酬を受け取れるという利点がある。
ひとくちに「ライドシェア導入」と言っても、都市部や観光地と地方では、まったく事情が違う。前者はまだまだ議論の余地があるが、バス・タクシーなどの維持が難しくなった地方でのライドシェア導入は、沈みゆく地方交通の「救いの一手」となる可能性を秘めているのではないか。
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