メンテナンスも必要ないぐらい状態が良かったMAMIYA ZM。ビューファインダのあたりを少しクリーニングした程度で、早速撮影に出かけた。
電源スイッチが巻き上げ部の根元にあるのだが、赤が電源OFF、白がONである。今時の感性からすると逆のような気もするが、反対側のセルフタイマーゾーンに簡単に倒れないようにという配慮であろう。
普段から単玉ばかり使っていると、開放F値はF1.4とか1.7ぐらいが普通である。F2.8だともう暗い方なので、F3.5というのはかなり違和感がある。ビューファインダが暗くなるが、プリズムが良くできているのか、フォーカスの山はつかみやすい。
ただ絞り優先のカメラの割には、絞りのプレビューができないのは困った。つまり開放で撮るなら見たままだが、絞ったときに被写界深度がどれぐらいになるのか、事前に見ることができないのである。いろんな絞りで沢山撮ってみて、自分で感覚を掴めということらしい。近代のカメラだが、ユーザーに厳しい作りである。
レンズは前玉がヘリまで出っ張っているので、別途フィルタねじにはめ込むタイプのラバーフードを用意した。フードを付けたままだとレンズキャップができないのが残念だが、まあこまめに取り外しするしかないだろう。
シャッターボタンは非常に軽く、手ブレは少ない。だが押し込みが浅く、半押し時のクリックがないので、半押しでAEロックというのが難しい。うっかりそのままシャッターが切れてしまうこともある。そんなんだったら、ファインダ内の露出計を見ながらマニュアルで撮った方が全然早い。
カメラマンの友人に聞くと、MAMIYAのレンズは描写がカリッとしているのが特徴なのだそうである。2本のレンズのうち28〜50mmのほうは、付けてみると結構バランスがいい。最短が60センチなので、花などを撮るにはもう少し寄りたいところだが、まあ標準的であろう。50mm画角では開放でのボケが綺麗で、テーマ性を持たせた構図が作りやすい。
またテレ端ではその解像度の高さと相まって、キッチリした爽快な絵柄となる。この表情の違いが面白いレンズだ。発色は強く、高コントラスト。ネガでも張りのある色味が楽しめる点は、Nikonのレンズに近いキャラクターと言えるかもしれない。
一方35〜105mmレンズのほうは典型的な長玉設計で、最短距離が1.6mである。ワイド端で使うメリットはあまり感じられない。開放では解像感が若干甘くなるようだが、少し絞ればMAMIYAの特徴であるカリッとした描写になる。強い発色、高コントラストという特徴は、変わらないようだ。
また開放テレ端の撮影では、特徴的な「ぐるぐるボケ」が出る。レンズ設計によると思うが、OLYMPUS Pen Fの標準レンズでも、開放ではこのようなボケがよく見られる。効果としては面白いが、使いどころに注意が必要だろう。
さすが日本のカメラだと感じたのは、フィルムの巻き上げの軽さだ。ドイツのカメラなどは、フィルムがちぎれるんじゃないかと思うほど固いものがあるが、合理性+なめらかさといったところが、日本製の強みなのであろう。
考えてみれば、筆者手持ちのフィルムカメラで、ズームレンズなのはこれだけだ。変に実用的過ぎるので、できれば標準であった50mm/F1.7の単玉で撮ってみたいのだが、なかなか「レンズだけ」というものが見つからない。それもまあ根気よく待っていれば、いつか出会うこともあるだろう。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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