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NEX-C3は「3の世界」をさらに広げるカメラインタビュー(1/2 ページ)

» 2011年07月05日 09時12分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 ソニーから販売開始されたEマウントの最新デジタルカメラ「NEX-C3」。「APS-Cサイズセンサーを搭載した、レンズ交換式デジタルカメラのボディでは世界最小最軽量」となる小型軽量ボディのほか、新ユーザーインタフェース「マイフォトスタイル」を採用した意欲作だ。

photo NEX-C3

 デジタル一眼カメラを手にしたいと考えるユーザーにとっての障壁が「大きい」「重い」「難しい」であると指摘されて久しく、各社がそれらを乗り越えるべく新製品を投入している。その意味では小型軽量化を進め、新UIを採用したNEX-C3の投入は妥当なものに思える。

 ただ、前モデル「NEX-3」と同時に発表されたNEX-5についてはモデルチェンジが行われず、NEX-5とNEX-C3を比較するとスペック的には逆転した部分もあるなど、Eマウントシステムとしての全体を見渡すとややいびつな構造になっているようにも思える。

 ソニーは何を思い、何を実現すべくNEX-C3を投入したのか。設計責任者を務めた宮井博邦氏と、商品企画を担当した竹倉千保氏に話を聞いた。

photo 同社PI&S事業本部 宮井博邦氏(イメージング第1事業部 商品設計3部 1課 統括課長) 

――NEX-3/5が発売されて1年が経過し、次のEマウントカメラがNEX-3の後継というのにはちょっと驚きました。NEX-C3の企画はいつごろからスタートしたのでしょう。

宮井氏: 実はNEX-3/5の発表(2010年5月11日)以前から、次のEマウントカメラの姿を模索していました。いろいろな選択肢が浮上しましたが、NEX-3が対象とするユーザーは、コンパクトデジカメしか使ったことがない、あるいはデジカメをこれまで使ったことのない人もいると思い、その後継製品はもっとカジュアルにNEXの良さを伝えられる製品とすることを考えました。

 NEX-C3の「C」には、カジュアル(Casual)のC、コンパクト(Compact)のCなど、いろいろな意味を込めました。「NEX-3が対象としていたユーザー」を深掘りしたい、というニュアンスです。

photo Cap. NEX-3/5の発売後に同社が行った調査によれば、NEX-3は女性比率が高く、カメラ歴の浅い人も多かった。竹倉氏によれば、ミラーレスカメラの市場が大きくなれば、ボリュームゾーンはよりライトな層となるだろうという予測もあり、そうしたユーザーにとっての障壁(大きい、重い、難しい)を引き下げる方向を指向したという

――新たに導入されたユーザーインタフェースである「マイフォトスタイル」では、オート撮影時に「明るさ」「色合い」「背景ぼかし」「鮮やかさ」「ピクチャーエフェクト」など7つの効果/機能をワンボタンで呼び出し、適用できます。これは障壁のひとつ「難しい」に対する回答でしょうか。

宮井氏: NEX-3/5には「背景ぼかしコントロール」を導入しましたが、NEX-C3ではこの背景ぼかしのように、「簡単な操作」「言葉での気づき」をさらに提案したかったのです。カードをシャッフルするような感じで、自分の好みの作品、仕上がりを作り出せるような感じとでも言いましょうか。

 ピクチャーエフェクトも同じです。パレットから絵の具を取り出してキャンバスへおくように、簡単に自分の好みを写真へ反映させることができますし、絵の具を重ねて塗るように、効果を重ねて適用することもできます。

竹倉氏: NEX-3/5を投入した後、さまざまな反響を頂きました。初めてのレンズ交換式デジカメがNEX-3/5だった方からは、「もっと写真を思い通りに撮りたい」「写真について学びたい」など意欲の高い反応が多かったのです。その中のひとつ、「簡単な操作で個性をプラスしたい」という要望をかたちにしたのが、「マイフォトスタイル」といえます。

宮井氏: いろいろな要望を頂けることは非常にうれしいことですが、あれもこれもと実装してしまうと操作が煩雑になってしまいます。NEX-C3では「ベーシックなものを並べ、それらを組み合わせて新たな個性を演出する」という方法を導入することにしました。

――NEX-C3のデザインはNEX-3の印象を保ちながら、より小型化を進め、シャープさ、スマートさを感じさせるものになっていると思います。NEX-3/5の投入時、NEX-3については「先進的なデザインコンセプトを愚直に達成したNEX-5に対して、NEX-3はよりマイルドで、カジュアルさを意識したデザイン」とされていましたが、このコンセプトは変わらないのでしょうか。

宮井氏: カメラとしての重さ、存在感というのは求めたいと思いましたが、NEX-C3を使ってほしいユーザー層を考えると、そうでもないとも思いました。悩みましたね。結果としてたどり着いたのは、「カメラらしくありながら、大げさな感じのないカメラ」です。

 どうしても交換レンズが「カメラ」を主張してしまうのですが、真四角でクラシカルな全体像がいいかといえば、そうではなく、「カメラらしさとモダンさの融合」を求めた結果がこのデザインです。

 実際の設計に携わったのは、実はNEX-3/5と別のメンバーです。柔らかさを含めた印象作りのため、“いかにも”な大きなグリップを有するカメラ的なデザインではなく、柔らかくカジュアルな感じにするため、内部構造を一から見直しました。結果的には基板面積の半減や内部レイアウトの変更などで実現したものの、既存バッテリーの継続利用も重要と考えたため、小型化にはかなり苦労しました。

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