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ジャッカルの印象に思いをはせる山形豪・自然写真撮影紀

» 2011年09月22日 18時51分 公開
[山形豪,ITmedia]

 前回のハイエナ(山形豪・自然写真撮影紀:ハイエナのステレオタイプと実像)に続き、悪いイメージを持たれている動物シリーズの第2弾、今回はジャッカルのお話である。

 ハイエナとは違い、ジャッカルはれっきとしたイヌ科動物だ。アフリカにはセグロジャッカル、ゴールデンジャッカルそしてヨコスジジャッカルの3種類が生息している。いずれも雑食性で、小動物や昆虫などを捕らえるだけでなく、死肉も漁るし、時期によっては果物も食べる。環境適応能力が非常に高く、サバンナや山岳地帯、砂漠、湿地帯などの多様な場所を住みかとする。

photo 縄張りをパトロールするセグロジャッカルのペア。ボツワナ、セントラル・カラハリ動物保護区にて。 ニコンD200 AF-S500mm f4 DII 1/640 f5.6 ISO320
photo 木陰で涼むセグロジャッカル。南アフリカ、カラハリ砂漠にて。 ニコンD300, AF-S 500mm f4 DII 1/250 f10 ISO500

 東アフリカのセレンゲティ平原や、南部アフリカのカラハリ砂漠では、ライオンが倒した獲物の周りにジャッカルが群がる光景をよく目にする。隙を見つけては肉を一口かじり、猛ダッシュで逃げるその手法は、見ている方がハラハラしてしまう危なっかしいものだ。もしライオンに捕まろうものなら、一撃であの世行きである。ハイエナと比べても、ジャッカルは小柄で非力だ。ブチハイエナが大きいものでは体重80キロを超すのに対し、ジャッカルの仲間はせいぜい15キロ程度しかない。そのため、俊敏さを生かした「ヒット・アンド・ラン」がサバイバルの鍵なのだ。

 写真という観点から見ると、ジャッカルは非常に楽しい被写体だ。そもそもイヌ科動物は活発に動き回る上に、社会性が強く個体間のコミュニケーションを盛んに行う。飼い犬でもそうだが、しぐさによる感情表現が豊かなので、撮っていて飽きることがない。特に、子育ての時期になると、頻繁にエサを捕らねばならないため、より行動的になるし、子どもの姿は本当にかわいらしい。

photo 親にエサをねだるセグロジャッカルの子供たち。ナミビア、エトシャ国立公園にて。 ニコンF5、AF-S 500mm f4 DII フジクローム・プロビア

 そんなジャッカルも、ハイエナ同様に悪いイメージとセットで連想されがちである。例えば、フレデリック・フォーサイスの小説に「ジャッカルの日」という作品がある。ジャッカルというコードネームで呼ばれるテロリストがフランスのシャルル・ド・ゴール大統領暗殺を試みるという話だ。漫画「北斗の拳」にも同名の悪党が登場する。

 現実のジャッカルはどうかと言うと、確かに一部の人間からはあまりよく思われていない。南部アフリカではヒツジの子どもを襲うので、畜産関係者にとっては害獣であり、駆逐の対象になっているのだ。北米大陸で牧場主がコヨーテを嫌うのと同じ理由だ。ジャッカルという名が否定的な響きを持つに至った原因は、この辺にもあるのだろうと思われる。

photo 遠吠えをあげるセグロジャッカル。ナミビア、エトシャ国立公園にて。ニコンF5, AF-S 500mm f4 DII フジクローム・プロビア

 ところが、ここでひとつの疑問が生じる。ライオンやヒョウ、ピューマなどの大型ネコ科動物も、時として家畜を襲うので「害獣」に該当する。にもかかわらず、彼らには否定的なイメージが付随しないのはなぜかという疑問だ。ライオンに至っては、「百獣の王」の称号まで与えられている。やっている事は大差ないはずなのに、この差は一体どこから来るのだろうか。

 恐らくは、とても長い年月をかけて徐々に形成されていったイメージなのだろうが、どのあたりに起源があり、いかなる経緯で現在に至るのかを知りたいと思うのである。Mac OS X のバージョンがスノーレパード(ユキヒョウ)やライオンではなく、ジャッカルやハイエナだと聞こえが悪いように感じるのは、一体なぜなのだろうか?

著者プロフィール

山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら

【お知らせ】山形氏の新著として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが出版されました。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)


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