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ミラーレスと呼ばないで欲しい――「FUJIFILM X-Pro1」とは何か2012 International CES(1/4 ページ)

» 2012年01月13日 22時01分 公開
[小山安博,ITmedia]

 富士フイルムは、2012 International CESにて発表したレンズ交換式デジタルカメラ「FUJIFILM X-Pro1」の詳細を解説する説明会を開催した。高画質を実現する仕組みなどを、同社電子映像事業次長兼電子映像事業部営業部営業部長の松本雅岳氏と、電子映像事業部商品部担当課長の河原洋氏が解説した。

photo 「FUJIFILM X-Pro1」

 「FUJIFILM X-Pro1」(以下 X-Pro1)は、富士フイルムのプレミアム製品ラインである“Xシリーズ”の最新作で、初めてレンズ交換に対応したカメラだ。松本氏によれば、富士フイルム自身はレンズ交換式カメラを「3年前から出すことを考えていた」という。しかし、銀塩フィルム時代や「FinePix S5 Pro」のようなプロ向けでなく、ハイアマチュアも対象にするようなレンズ交換式は「しっかりやったことがない」ため、突然レンズ交換式を手がけるのではなく、まずはブランド力などの構築を目指したという。

photophoto 電子映像事業次長 松本雅岳氏(写真=左)、電子映像事業部商品部担当課長 河原洋氏(写真=右)

 そこでブランド構築、技術力の披露という形で企画されたのが「FUJIFILM X100」だった。その後、より小型化した「FUJIFILM X10」、高倍率ズームレンズを搭載した「FUJIFILM X-S1」と製品を出した。X-S1は「高倍率ズーム機の中でも画質に優れた製品を」と企画されており、2/3型と大型の撮像素子で「普通のデジタル一眼レフカメラと同じぐらいの画質」(松本氏)を実現している。

 次いで松本氏が話したのは低価格デジカメの不振とその対応策だ。

 低価格デジカメの不振は特に米国にて顕著で、4割近くのマイナスになっているという。スマートフォンのカメラ機能向上がその一要因であることは間違いなところであるが、実は同社では3年ほど前から携帯電話カメラの画質がさらに向上すれば低価格デジカメはなくなり、中高級機しか生き残れないと考えていたそうだ。

 「スマートフォンでは撮影できない、美しい写真が撮れるカメラを作っていきたい。今後数年間で、それを作れるメーカーしか生き残れないのではないか」(松本氏)

 また、富士フイルムとしては、カメラには趣味性――レンズ交換やカメラとしての機能、モノとして掌中で楽しむ姿形といったもの――があり、そのためにはレンズ交換式を出さねばならないという認識も持っていた。つまり、カメラでしか撮れない写真が撮れ、カメラとしての趣味性を満たすカメラとして誕生したのがX-Pro1なのだ。

 2011年にFUJIFILM X100を発売した際、あえて低価格化に注力せずに様子を見たが、1年間で10万台の販売予測を9カ月で達成し、次いで投入したFUJIFILM X10も年間30万台の計画が、すでに12万台の注文があり「計画はまず達成できる」(同社)状況にある。つまり同社の考えは市場ニーズにマッチしており、X-Pro1のコンセプトも成功するだろうという認識だ。

 X-Pro1は、カメラのシステムとしてはミラーレスとなるが、「あえてミラーレスと呼ばず、プレミアムレンズ交換式と呼びたい」と松本氏は言う。

 現行の各社ミラーレスカメラは10万円以下の価格で、「画質では一眼レフの上位機種にはかなわない」(松本氏)が、X-Pro1は「技術の粋をつぎ込み」高級一眼レフに対向できる画質を実現したと自信を見せる。価格はレンズ込みで20万円を超える設定となったが、「その価格でも十分期待に応えられる品質を持ったカメラだと自負している」そうである。

 Xシリーズは、最高画質を追求した製品群で、「それぞれのカテゴリで最高の画質、品位を目指した」(河原氏)。そのなかでもトップエンド製品の第1弾となるのがX-Pro1だ。河原氏は、買いやすく、小さくて操作性がシンプルであるのがいわゆるミラーレスカメラの特徴だとすると、それとは大きく違った特徴を持っているのがX-Pro1だと話す。ハイブリッドビューファインダー(HVF)を搭載し、小さくもなく、高品位であり、市場に認められ、この高級カメラのスタイルを確立したいと河原氏は意気込む。

 高画質を実現する1つの技術が、新たに開発したAPS-Cサイズの「X-Trans CMOS」センサーだ。デジタルカメラでは、特に規則的に並ぶ模様を撮影した際、原理的に「モアレ」と呼ばれる画質劣化が発生しやすい。これは、RGBのカラーフィルターが2×2配列で規則正しく並ぶセンサーでは構造的に発生してしまう現象で、これを抑えるためにローパスフィルターが追加されている。ただし、ローパスフィルターは解像性能を犠牲にしてしまうデメリットがある。

photophoto 従来のセンサーはRGBが規則正しく並ぶ(写真=左)が、銀塩フィルムでは粒子が不規則に並んでいる(写真=右)ため、モアレが発生しにくい
photophoto 6×6配列とした「X-Trans CMOS」センサー(写真=左)、従来の2×2配列との比較(写真=右)

 銀塩フィルムの場合は、有機化合物の銀が不規則に並んでいているためにモアレは発生しない。これに着目したのがX-Trans CMOSで、6×6の36ピクセルをひとかたまりとして1つの画素を構成しており、「従来より非周期性が高い」(同)構造にしたことで、モアレの発生が抑えられたという。

photo 2×2配列に比べて、常に各行列にRGBが存在している

また、同じ36ピクセルで見たときに、従来のセンサーはRGRGが並ぶ行列とGBGBが並ぶ行列が組み合わされており、1行列でRかBが存在しないことになる。X-Trans CMOSでは、1つの行列内に必ずRGBが入っているため補間処理での失敗が減り、色再現性が向上する。偽色の発生も抑えられ、ローパスフィルターを使わないことが可能になった。

photophoto モアレは規則正しい被写体の場合に発生する

 これにより、X-Pro1はAPS-Cサイズのセンサーを搭載するデジタル一眼レフカメラと比べて「圧倒的に解像感が高く、ノイズが少ない」画質となったほか、状況によってはフルサイズセンサー搭載機を超える解像感を実現するという。ただ、動画に関してはモアレが発生する可能性はあるそうだ。

photo ノイズ、解像感ともにAPS-Cを上回り、フルサイズさえも超える
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