1995年の「QV-10」よりデジカメを手がける、カシオ計算機のデジカメブランド「EXILIM」が10周年を迎えた。同社といえば、QV-10にて“撮った写真をその場で見られる”という現在にも通じるスタイルを提案するなど、「デジタルのカメラ」としてエポックメーキングな製品を多く排出するメーカーでもある。
そして2012年のいま、デジカメはすっかり日常品として定着した。定着の反面、嗜好(しこう)品としてのデジタルカメラはカシオ計算機の手がけないデジタル一眼レフやミラーレスタイプがその代表格となり、同社の得意とするコンパクトデジカメは一部の高級志向製品を除いてスマートフォンとの競争にさらされ、その行く先を悲観する声もある。
だが、QV-10からデジタルカメラ事業に携わってきた、同社の中山仁氏(執行役員 QV事業部長)の表情は以外と思えるほど明るい。
――1995年のQV-10からデジタルカメラ事業に携わってらっしゃいますが、まずはこの17年を振り返るとどのような感想を持たれますか。
中山氏: QV-10には商品企画として携わりましたが、そのときに考えたのが「銀塩カメラをデジタルにする」ではなく、「画像入力ツール、画像コミュニケーションツールとして提案する」ことでした。当時はWindows 95を追い風にしたパソコンブームもあって他業種からのデジカメ参入もあり、いつのまにか銀塩に追いつけ追い越せの流れになりました。
そして2000年ぐらいでしょうか。デジカメが4000万台の市場に成長したころ、各社は高画素化競争に走りましたが、わたしたちはその流れをつかめずにいました。そこで改めて「デジタルカメラの進化とは何か」を考え、スリムさや軽快さを前面に出したEXILIMブランドを立ち上げたのです。その第1号機が2002年の「EX-S1」です。
その後にも大画面液晶、薄型、省電力などコンパクトデジカメの基本性能とも言える部分を高めることで市場をリードできたのではないかと思っています。QV-10からが第1世代製品とすれば、EX-S1に始まるEXILIMシリーズ製品が第2世代の製品と言えます。そしてデジタルの高速処理を中核に据えた“HIGH-SPEED EXILIM”の「EX-F1」からは第3世代の製品と区別できると思います。
――これまでにEXILIMブランドの製品だけでも100モデルを投入していますが、印象深いモデルはどれでしょう。
中山氏: どれも自分の子どもですからどれが一番とは(笑)。あえて挙げるなら現在のデジカメの原型となったQV-10。それに1年間「デジタルカメラとは何か」を考えるために研究所に戻って試行錯誤を重ねた末、世に出したEX-S1でしょうか。ですが、EX-S1のセールスは大ヒットと呼べるものではなく、大ヒットとなったのは、3倍ズームレンズに当時としては大きな2型液晶を搭載した「EX-Z3」で、その後は上昇気流に乗った感じとなりました。
その次は“HIGH-SPEED EXILIM”の第1号機「EX-F1」ですね。デジタルの高速処理、ハイスピード技術の使い方を提案する製品として、プロやハイアマにも満足してもらえる製品として企画しました。
――「デジタルならでは」の利便性や楽しさを前面に押し出す姿勢はQV-10から変わらずに引き継がれていると思いますが、その基本姿勢についてこれまでの17年間で見直すことはなかったのでしょうか。
中山氏: カメラである以上、画質が重要なことは確かです。ですが、デジタルならではの利便性や楽しさを提案していきたいという気持ちは変わりません。カシオは画像処理エンジンを内製しているのが一番のコアコンピタンス(その企業ならではの強み)です。レンズと撮像素子を内製していないからこそ、自由な製品企画ができるとも言えます。
――レンズに撮像素子というキーコンポーネントを、その時々の製品企画や状況に応じて市場からチョイスできるのは自由度という点からすれば強みですが、その分だけ、製品企画の重要性が高くなります。
中山氏: 製品の企画から投入は長い場合に2年ほどの時間がかかりますから、その点についてはレンズメーカー、撮像素子メーカーと一緒に考えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR