キヤノンは2012年春、フルサイズセンサーを搭載したデジタル一眼レフ「EOS 5D Mark III」を発売した。それまでの「EOS 5D Mark II」からAFや連写性能を強化し、使い勝手をいっそう高めたモデルとして、発売から現在まで好調なセールスを記録中だ。そして、さらにフルサイズの魅力をより幅広いユーザー層に伝える製品として11月末に新登場したのが、今回取り上げる「EOS 6D」である。
EOS 6Dの特長を簡単にまとめると、ファインダーやAF関連、連写など一部のスペックを抑えることで、EOS 5D Mark IIIに比較しておよそ一回りの小型軽量化と低価格化を果たしたモデル、ということになる。といっても単なる廉価機ではなく、GPSやWi-FiといったEOSシリーズでは初となる機能も盛り込まれている。
まずは外観から見てみよう。ボディはEOS 5D Mark IIIに比べて、幅が7.5ミリ、高さが5.9ミリ、奥行きが5.2ミリそれぞれ小さくなり、使用時重量は195グラム軽くなった。このボディサイズと重量は、APS-Cサイズのセンサーを搭載した中級機「EOS 60D」とほぼ同等だ。EOS 60Dとは異なり、内蔵ストロボや液晶のバリアングル機構は備えていないが、センサーサイズが約2.5倍大きなフルサイズ機でありながら、APS-C機クラスのボディを実現したことはそれだけで価値がある。
外装はトップカバーが樹脂素材で、フロントカバーおよびリアカバーがマグネシウム合金製。ほぼ全体が樹脂素材のEOS 60Dに比べると、手にしたときに伝わる質感や剛性感はワンランク上だ。EOS 5D Mark IIIと比較しても、大きく見劣りすることはない。グリップラバーの手触りは良好で、筆者のやや大きな手にもしっくりとフィットする。
背面モニターには約104万画素のワイド3型クリアビュー液晶を搭載する。EOS 5D Mark IIIに比べた場合、液晶サイズはやや小さくなっているが、精細感は同等で画像細部のピントまでをしっかりと確認可能だ。ただし、今回試用したEOS 6Dの液晶はやや色温度が低く、画像全体が黄色っぽく色かぶりしたように見える点は気になった。
一方ファインダーには、視野率97%・倍率0.71倍のペンタプリズムを搭載する。構図を厳密にチェックしながら撮るには視野率100%が理想だが、約97%でも特に不都合があるわけではない。ファインダーの広さと明るさは十分で見やすさは上々だ。
AFには、中央1点がクロス測距に対応した合計11点AFセンサーを採用する。クロスセンサー41点を含む61点AFセンサーを備えたEOS 5D Mark IIIに比べて、ここは物足りない部分だ。AFスピードについては高速で、動きのある被写体に対しても大きなストレスを感じることなくスムーズに合焦する。薄暗いシーンでの合焦率についても優秀といえる。
AF関連のオプションとしては、撮影シーンに応じて被写体追従特性や速度変化に対する追従性などをカスタム設定できるほか、レンズの個体差によるピントのずれを補正する「AFマイクロアジャストメント」などが利用できる。
連写は最高で約4.5コマ/秒に対応。連続撮影可能枚数はUHS-I対応の高速カードを使った場合、JPEGで約1250枚、RAW+JPEGで約8枚となる。本格的なスポーツ撮影以外では実用十分な性能だ。シャッター音は比較的静かで、やや低めの音。EOS 5D Mark IIIから継承した静音撮影モードを選ぶことで、レリーズ時の音と振動を最小限に抑えることもできる。
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