――意図は伝わりましたが、非常に実験的な製品であるようにも写ります。最終的な製品化が決定するまでに時間はかからなかったのでしょうか。また、シャッターボタンはありませんが、「ワンタッチスマホボタン」があるなど、コミュニケーションツールとしての側面が重視されているように思えますが、PowerShot Nにおいて「コミュニケーション」の役割はどれほど期待されているのでしょう。
岩田氏: 既にお伝えしたよう、私たちは常に製品開発や市場状況の調査を行っています。PowerShot Nについては、「新コンセプトのコンパクトデジカメ」という製品での市販化はプロジェクトを進める際の前提条件でした。
なぜ「IXY」ではなく「PowerShot」ブランドなのかという質問も頂きますが、ワールドワイドでは「PowerShot」の方がメジャーブランドですし(編注:PowerShot Nは米ラスベガスで行われたInternational CESにて世界初公開されており、公開時に米国での販売予定も日本国内に先駆けて発表されている)、IXYには、フルフラットでデザイン製の高いモデルという位置づけがあります。
「コミュニケーション」の役割ですが、端的に言えばPowerShot Nは新しい写真に出会う「カメラ」です。基本的にキヤノンのカメラであることは変わりません。例えば、「IXY 610F」でも色味やトーンについては、PowerShot Nと似たような写真を撮ることができます。ですが、構図はPowerShot Nではないとやりにくい部分があります。
PowerShot Nは「見たことのない構図」「撮ったことのない構図」までもを提示、提案してくれるカメラです。「ワンタッチスマホ」ボタンやスマートフォン連携機能の搭載もあり、コミュニケーションツールとしての位置づけもありますが、あくまでも「キヤノンのカメラ」です。
――直販サイトのみでの限定販売と販売形態も、近年のPowerShotやIXYと一線を画します。その意図は。また、2万9800円という価格についてはどうお考えでしょうか。
岩田氏: 新コンセプトの製品なので、ダイレクトへお客様へお届けしたかったという思いがまずあります。予約受け付け開始の際には、どのような人へ届けたいか、メッセージを込めてゆくつもりです。そのような販売形態を取った際、どうやればメーカーの思いがお客様に届くのかを試すマーケティング的な実験の要素も含みます。
価格については、いわゆるコンパクトデジカメの平均単価が1万5000円程度となっている現状を考えれば倍の値段となります。ですが、ならではの特徴もありますので、適切ではないかと考えています。
――さまざまな実験要素を含みますが、PowerShot Nの投入でキヤノンとしてはどのような成果を得られると期待しますか。
岩田氏: PowerShot Nを出すことによって、ユーザーがどのように写真に向き合っているのかを知りたいと考えています。クリエイティブショットに関していえば、その機能の縦展開・横展開というものあり得ますが、まずは得られたものを早急に消化し、他の製品へフィードバックしなくてはなりません。
PowerShotシリーズには「プレミアムモデル」と位置づける「Gシリーズ」「Sシリーズ」があります。このように、高画質を追い求め、カメラとしての王道を歩むモデルは今後も継続していきますし、そうではない、スマートフォンと共存共栄していくような立ち位置を目指し、より広いユーザー層へアピールするモデルも検討していきます。PowerShot Nはそのひとつといえるでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR