普通、単焦点のコンパクトデジカメといえば、スナップ撮影に向いた広角系レンズを搭載することが多い。
28ミリ相当だと、シグマ「SIGMA DP1 Merrill」にペンタックスリコー「GR DIGITAL IV」、ニコン「COOLPIX A」などがあるし、35ミリ相当だと富士フイルム「FUJIFILM X100S」にソニー「DSC-RX1」、ライカ「X2」などになる。それよりちょっと長い標準レンズ系で「SIGMA DP2 Merrill」といったところ。さらに長い75ミリ相当の中望遠単焦点のコンパクトなんてまずない。
ただでさえユニークなシグマのDP Merrillシリーズの3番目として登場した「SIGMA DP3 Merrill」は、75ミリ相当単焦点の「中望遠ハイエンドコンパクトデジカメ」という、なんとも面白くて面妖なカメラだったのである。
DP1/2/3と全部そろえると、広角・標準・中望遠といい感じで焦点距離がバラけるのだけど、全部そろえる人なんて(実際にいるけれども)わずかだろう。じゃあ中望遠コンパクトは異端か、というとたぶん異端なのだけれども、使えないかというと、そんなことないのである。実際に持って歩いてみると、十分に楽しい。
Foveon X3センサーというユニークな撮像素子を積んだ異端っぽいDPシリーズで、さらにコンパクトデジカメとしては異色の中望遠レンズ。その組み合わせがSIGMA DP3 Merrill。それだけで触ってみたくなるではないか。
DPシリーズが面白いのはボディはまったく同じで、レンズだけが異なること。
レンズだけじゃなくてボディごと交換して使おうというわけで、仮に3台持ったとしても操作感はまったく同じなのでとまどわずに済む。3台を持つ人にとって、同じ感覚で使い分けられるのはよいことだ。
ここまでやるならレンズ交換式に、という声もあるだろうが、レンズ一体型の方が画質を極めやすく、サイズもコンパクトにできるわけで、シンプルで高画質というコンセプトにあっている。で、新製品のSIGMA DP3 Merrill(以下、DP3Mと略します)は75ミリ相当となる50mm/F2.8のレンズを搭載している。
レンズの開放F値はF2.8でレンズに「50mm macro」とあるよう、等倍とはいわないまでも、22.6センチまで寄れるのでかなりマクロ的に使える。
75ミリ相当という焦点距離はポートレートのほかにも、遠近感があまり出ないので「形」をきれいに描写できるし、寄れるのでモノを撮るのにもいい。スナップを撮影するときも、中望遠は撮りたい被写体にしっかりフォーカスした撮り方ができるので、けっこう使いやすく、また、マクロ的に寄った撮影にも向いてるのだ。
で、DPシリーズに熱狂的なファンが多いのは、なにはともあれその撮像素子にある。DPシリーズを知っている人には繰り返しになるが、Foveon X3センサーである。
一般的な撮像素子は、例えば1600万画素だとすると、もっとも使われる「ベイヤー配列」では、Gが800万、RとBが400万という割当で、もともと明るさしか感じない素子に色を与えている。そこから1600万画素のフルカラー画像を作ってるのだ。だからどうしても完璧な1600万画素というわけにはいかない。元データではRやBは400万画素分しかないのだから。
その点Foveon X3センサーは3層構造になっており、RGBそれぞれ約1600万画素、合計4800万(有効画素数はもうちょっと少ないので、実際には約4600万画素)画素を持ってるのだ。RGBそれぞれ約1600万画素あるので、リアルな1600万画素の画像を作れるのである。
よって、ホンモノの1600万画素の解像感を得られる、モアレがでない、原理的に偽色がでないので、解像感が高く彩度を上げても色が破綻しないという良さがある。反対に感度を上げづらい(高感度に弱い)とか、4600万画素相当のデータがあるのでRAWデータのファイルサイズがでかい、バッテリの消耗が大きい(製品にはバッテリがはじめから2つ付属するくらい)という欠点もある。
実際にその解像感はどんなものなのか。
JPEGで撮影したものの一部を等倍表示したのがこちら。
猫の毛の1本1本がすごくしっかり描写されてるのが分かると思う。
ISO感度はISO100から6400までだが、できればISOまで800に抑えたいところ。例えばISO3200まで上げて撮るとこんなことになる。
ただし、RAWで撮ってちゃんと現像するとここまでノイズを減らせる。しっかり自分で現像すれば多少ISO感度を上げてもなんとかなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR