2014年は魅力的な高級コンパクトデジカメが数多く登場した。小型軽量ながら4K動画も撮れるパナソニック「LUMIX LX100」や、アナログ感覚のデザインと操作性を持つ富士フイルム「FUJIFILM X30」、自分撮り対応のチルト液晶とポップアップ式ファインダーを両立させたソニー「Cyber-shot RX100 III」などは、いずれも実用十分な画質とさまざまなシーンに対応できる多機能を備えつつ、プラスαの魅力を持ったカメラといっていい。
だが、これらのモデル以上に個人的に気に入ったのは、以下の3製品だ。それぞれの特徴を振り返ってみよう。
キヤノンは、1.5型センサー&光学5倍ズームを搭載した「PowerShot G1 X Mark II」を春に発売したが、他社よりも一歩上のスペックを狙ったためか、ボディがやや大きく重くなったことが弱点だった。AFスピードなど操作面にも課題があった。
そこで、秋発売の「PowerShot G7 X」では、1型センサー&光学4.2倍ズームを採用し、胸ポケットにも収まる薄型軽量ボディを実現した。携帯性だけでなく、AFなどの操作感も大きく向上。格段に使いやすいカメラに仕上がっている。
操作面では、撮影モードをマニュアルにセットした場合、絞り値を鏡胴部のリング回転で、シャッター速度を背面のダイヤル操作でそれぞれ素早く変更できる点が便利だ。その上で、ISO感度をオートに設定すれば、どんなシーンでも常に好きな絞り値とシャッター速度で撮影可能になる。しかも、その際に天面の露出補正ダイヤルを回すことで、必要に応じて露出補正が行える。この「マニュアル露出+オートISO+露出補正」は、私がスナップ撮影で多用する、好きな撮影方法の1つである。これができるカメラはミラーレスや一眼レフを含めても少数しかない。
本モデルのライバルといえるのは、ボディサイズが近いソニー「RX100」シリーズだ。PowerShot G7 Xがライバルに勝るポイントは、ボタンやダイヤル類が比較的大きめで操作しやすいこと。手に取ったときのホールド感やシャッターボタンの感触、チルト可動する液晶モニターの剛性感などでも上回っている。ただ、このあたりは個人差もあるので、購入検討中の人は店頭で実機を触ってみるのがいいだろう。
「FUJIFILM X100T」は、とてもぜいたくなこだわりを貫いているカメラ。ぜいたくとは、液晶モニターや電子ビューファインダーが当たり前になりつつある今の時代に、光学ファインダーの技術をさらに突き詰めている点だ。
新搭載した電子式のレンジファインダーは、光学ファインダーによって画面全体をクリアな光学像で見ながら、画面の右下に小さな電子ファインダーを表示して、厳密なピントを確認できる仕組み。つまり、光学ファインダーでは正確なピントが分かりにくいという従来の弱点を解消する、光学式と電子式が融合したユニークなファインダーである。斬新な見え方に最初は戸惑うが、使えば使うほどクセになるくらい面白い。
ボディは超小型とはいえないものの、しっくりと手になじむ形状で、ホールドバランスは心地いい。レンズには、35ミリ相当の明るい広角単焦点を搭載。適度な広がりと遠近感を備えつつ、目の前の光景を誇張せず自然に切り取れるレンズだ。そして、滑らかなボケとシャープな切れ味が楽しめる。
さらに、メカダイヤルを多用したアナログ感覚の操作系や、0.01秒という一眼レフに勝るシャッタータイムラグの短さ、レンズシャッターならではの静かで鋭いシャッター音など見どころは盛りだくさん。スペック的には地味だが、手に取った瞬間に撮影意欲が刺激される、そんなカメラだ。
RGBの3層からなるFoveon X3センサーの基本を受け継ぎつつ、3層の画素数を「1:1:4」構造に改良した新センサー「Quattro」を搭載したモデルが「dp1 Quattro」。この新構造によって高画素化しながらも画素数アップにともなうデータ量の増大を抑え、高解像と高速処理の両立を図っている。
従来のMerrillシリーズとは画質の傾向がやや異なるが、遠景のディテールまでをくっきりと描き、質感や立体感をリアルに再現できる描写性能は、他社デジカメとは一線を画する、ほれぼれするような魅力だ。
しかも、露出やホワイトバランス、操作レスポンスといったカメラとしての基本性能は従来機から大きく向上し、狙いに応じた撮影がしやすくなった。
やや大柄で斬新すぎるボディデザインは好みが分かれるところ。人とは違ったカメラを持ちたいという欲求を満たしてくれる大胆なスタイリングだ。
なお「dp1 Quattro」は28ミリ相当の広角レンズ搭載モデルだ。これとは別に、45ミリ相当の標準レンズを搭載した「dp2 Quattro」も発売されている。また75ミリ相当の中望遠レンズ搭載の「dp3 Quattro」については、2015年に発売予定となっている。これは来年の楽しみの1つである。
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