パナソニックの「LUMIX G MACRO 30mm / F2.8 ASPH. / MEGA O.I.S.」は、マイクロフォーサーズ用の標準マクロレンズだ。35ミリ判換算の焦点距離は60ミリ相当。マクロ以外にスナップや風景、ポートレートにも活用できる自由度の高いレンズだ。
マイクロフォーサーズのマクロといえば、これまでに中望遠に対応したパナソニックの「LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm」やオリンパスの「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」などが発売されているが、より焦点距離が短い標準マクロとしては本レンズが初となる。
最短の撮影距離は10.5センチで、最大撮影倍率は等倍(35ミリ換算で2倍)に対応。等倍撮影時のワーキングディスタンスは2.3センチ程度。接写の際、適度な距離感が保てる中望遠マクロとは違って、対象物のすぐ手前まで近寄って撮影できることが特徴だ。
短い撮影距離は、近づくと逃げてしまう昆虫や動物の撮影用にはあまり向かないかもしれない。だがメリットもある。その1つは、外部ストロボをカメラから切り離して使う際、手持ちで自由な角度から光を当てやすいことだ。下の写真は、左手に持った外部ストロボを花の斜め上から発光させている。手前が暗くなって陰影が強調され、立体感のある描写が得られた。
次も同じく、外部ストロボを上から照射した。壁面と葉っぱの隙間を明るく照らすことで、葉の表面に迷路のような葉脈を浮かび上がらせた。絞りは、なるべく深い被写界深度を得るためにF11を選んだ。
外部ストロボを近づけることで、水滴の表面に光源をハイライトとして写し込んだ。雨上がり後の数時間は、水滴を撮るための絶好のチャンスである。
ちなみに今回の使用カメラ「DMC-G7」のストロボ同調速度は1/160秒だが、純正の外部ストロボ「DMW-FL360L」のFP発光機能を使えば、より高速シャッターでの同調が可能になる。ここでは1/500秒に設定することで背景を暗く落とし、花をいっそう鮮明に表現した。
レンズの全長は約63.5ミリで、質量は約180グラム。持ち運びの負担は少なく、取り回しは良好だ。外装はブラックの樹脂素材。チープな印象はなく、シンプルなデザインと相まって高品位な雰囲気が漂っている。
AFはスピーディに作動する。インナーフォーカスのため、フォーカス駆動によるレンズ全長の変化はない。マニュアルフォーカスには適度なトルクがあり、操作感はまずまずだ。距離目盛りはない。光学式手ブレ補正を内蔵し、オン/オフの切り替えはカメラ側で行う。
写りは絞り開放値からシャープネスが高く、キレ味の鋭い描写が得られる。開放値での周辺減光はややあるが、各種の収差は目立たないように低減されている。
下の写真は、旋回しながら放射状に伸びていくアロエの葉をハイアングルから捉えたもの。光は、ストロボ光をディフューザーで拡散させて弱めに当てた。
高さが異なる2つの花の両方をシャープに写すため、絞りをF13まで絞り込んで被写界深度を深くした。このカットのみ、オリンパス「E-M5 Mark II」を使ったが、装着時のボディバランスは悪くない。
植物はどんなふうに撮っても絵になりやすく、光や構図に工夫の余地もたくさんある。本レンズのみを持って野山や公園、植物園に出掛ければ、丸1日飽きることなく楽しめるだろう。
もちろん、マクロ撮影の面白さは植物に限らない。次の写真は、散歩中に見つけたアルファブランドの南京錠だ。クローズアップで迫ることで、キズや錆、汚れがかもし出す重厚な質感を表現した。
恐竜のミニチュアを10センチ程度の距離で接写した。絞りは開放値のF2.8に設定。背景の木漏れ日を丸ボケとして表現しつつ、バリアングル液晶を生かしてカメラを地面すれすれに構えることで、わずかに前ボケを写し込んで画面に奥行きを与えている。
そのほか、料理や雑貨などのテーブルフォト、背景をぼかしたポートレート、部分を切り取る感覚で捉えるスナップ撮影などにも役立つだろう。比較的コンパクトなので、標準ズームとセットで持ち歩いても苦にならない。撮影領域を広げる1本として、幅広くお勧めできる。
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