キャリア向けコアルータでさらに大きなアドバンテージ、Cisco副社長Interview

ブロードバンド大国となった日本はCRS-1の重要な市場となりそうだ。4年と5億ドルの投資を行って開発した通信事業者向けのハイエンドコアルータ。そこにはCiscoの経験が凝縮されているという。通信事業社向けコアルータを指揮するトニー・ベイツ氏に聞いた。

» 2004年06月29日 22時00分 公開
[聞き手:堀 哲也,ITmedia]

 ブロードバンド大国となった日本はCRS-1の重要な市場となりそうだ。シスコシステムズが販売ターゲットが限られながらも国内で大きな発表会を催したのは、それだけ力を入れているからだ。

 4年と5億ドルの投資を行って開発した通信事業者向けのハイエンドコアルータ「Cisco Carrier Routing System-1」。ラインカードシェルフとスイッチファブリックとモジュラ型のアプローチ、分散処理を可能にする新IOSと、アーキテクチャが刷新された。

 米Cisco Systemsの副社長兼ルーティングテクノロジーグループ キャリアコアマルチサービスビジネスユニットのジェネラルマネジャー、トニー・ベイツ氏は「Ciscoの経験を最大限に生かしたCRS-1を次世代のネットワーク、パケットのコンバージェンスの新基盤になる」と話す。

 来日中の同氏にCRS-1でCiscoが考えるところを聞いた。

トニー・ベイツ氏 Ciscoでキャリア向けのコアルータを指揮するトニー・ベイツ氏

――アーキテクチャが大きく変更され、20年の集大成などと謳っているわけですが、CiscoにおいてCRS-1はどんな意味を持つのですか。

ベイツ 位置づけとしては、サービスプロバイダ向けの製品となるわけですが、戦略としては幅広い意味を持っています。次世代のネットワーク、パケットのコンバージェンスに対した新しい基盤となります。つまり次世代への革新のステップと考えています。その点で、これまでの新製品の発表とは意味が異なってきます。

 20年というのはもちろん一つの区切りという点で大きな意味を持ちますが、CRS-1はこれまで私たちが学習してきたことに基づいて提供されるものです。初めてのインターネットルータを提供してきたこと、多くのサービスプロバイダのネットワークでCisco製品が使われていること、企業との関係も強いためこれから将来どういったネットワークサービスが求められるのか、これらを理解して開発したのです。

――とはいうものの、コンバージェンスを言うネットワーク機器ベンダーはCiscoだけはありません。

ベイツ いろんなトレンドがあると思いますが、私たちものはパケットのコンバージェンスというものです。Ciscoの場合は、IP/MPLSにかなりの投資をしてきました。確かにほかの企業のアプローチというのもあるのですが、例えば次世代の音声といった場合には、今の音声のスイッチに新たにパケットのインタフェースを追加するといったことだったりするわけです。

 今、世界の流れはCiscoが戦略的に投資してきた流れに近づいてきているといえるのではないでしょうか。

 ほとんどのキャリアにとって、電話/ATM/フレームリレーといったところでの収益・成長率は減ってきており、パケットインフラへ向かおうとしています。当然キャリアによってビジネスを牽引する要素は異なってきますが、どのキャリアもパズルの抜けている部分は分かっています。それは、運用のオペレーションコストを下げ、将来への支出をいかに避けるか、ということです。

 パケットに向かっているトレンド、私たちの経験、モジュラ化されたシステムアプローチというのが、私たちのコンバージェンスとほかのプレーヤーが言うものの意味の違いになります。

――CRS-1はテスト段階にありますね。顧客からの反応はどのようなものでしょう?

ベイツ かなり多くの国でテストを行っており、前向きな良い反応をいただいています。現在、お話できるのは、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、Sprint、MCI、NTTだけですが、大学や研究機関もテストを行っています。Sprintは実際に使用しているという発表をしました。

 テストはかなり長期的な戦略をとっており、CRSを出す前にソフトウェアのテストをしていました。主要な顧客は1年以上にわたってテストを重ねていたことになります。

――キャリア向けのコアルータという視点で見ると市場からコンペティターは減っていますね。

ベイツ マーケットシェアの数字を見れば私たちが65〜75%で残りがジュニパーということで、競合相手としてJuniper Networksを尊重していますが、率直に言って、これで私たちが技術的に大きな躍進をしたと言えます。

 ただ、顧客にはマルチベンダーのネットワークが欲しいといったところもありますので、これからも投資を続けてこの分野でリーダーシップを発揮できるようにしていきます。

――日本では日立製作所とNECがキャリア向けのコアルータで合弁会社を設立すると発表がありました。日本国内での強力なライバルに成長すると考えますか?

ベイツ コアルータにはかなりの投資が必要とされます。消えていった私たちのライバルたちも長期的に投資を維持できなかったことによります。新たな会社がどれだけ投資できるかによってくると思います。もちろん2社に対して敬意を持っていますが、投資額と人材、大型のパケットベースのネットワークをどれだけ理解できているか、少し時間が経てば分かることだと思います。

――250億円ともされています。

ベイツ それ以上の投資をしてやってみようという企業がいくつかありました。1つはProcket Networksですが、2億5000万ドル以上の投資をして、元Ciscoの20%ぐらいの人材を使ったわけですが、残念ながらうまくいきませんでした。

 かなり真剣にやろうとしていることは分かるので、やはり時間が経てば結果が分かると思います。

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