企業間がオンライン情報共有で取引を効率化するためにITが変革する小売の姿(2/2 ページ)

» 2004年11月01日 10時52分 公開
[舟本秀男,舟本流通研究室]
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 一方、HOME DEPOT、Rose、ACE Hardwareの大手ホームセンター小売業者は、主要取引先とVICS内に委員会を創設し、業界として積極的にUCCnetに参加する活動を推進している。百貨店/アパレル業界においても2004年8月に委員会を立ち上げ、同様の動きを開始した。このような業界を超えた活動により、UCCnet参加メンバー企業数は現在3700社におよんでいる。

 UCCnetは米国内の仕組みであるが、取引のグローバル化に伴い、世界規模に拡張する必要が出てきた。その実現に向けて取り組む母体がEAN/UCC(2005年1月よりGS1として統合化)である。2004年8月にはパイロットが実施され、2005年初頭にも本格稼動が予定されている。

GDSNとは

 ATカーニーの提唱した「e-コラボレーティブ・コマース 7つのステップ」で、第一段階の標準データの採用では、EAN/UCCのグローバル標準である14ケタの商品コードGTIN、13ケタの事業所コードGLN、および標準化された商品属性コードが用いられる。

 第二段階のシングル・アイテム・レジストリーでは、これら標準化された基本商品/取引先情報を一元的にデータベースに登録する。これをGS1・データ・レジストリーと呼んでいる。GS1・データ・レジストリーには基本情報のみが登録されており、詳細な商品属性情報はデータプールと呼ばれるローカル・データベースに置かれる。

 第三段階のアイテム同期では、図にあるようなGDSN(グローバル・データ・シンクロナイゼーション・ネットワーク)を通して、一元化された商品情報のやり取りが行われる。

 取引先は、GDSNを通じて対象とする小売業に新規商品情報を送信し(パブリケーション)、小売業は必要な商品情報を要求する(サブスクリプション)。GDSNで用いられるネットワーク手順は、EDIINTのAS2が標準として採用されている。 第4段階から第七段階のコラボレーションには、CPFRの基本機能である「実行」「需要/供給マネジメント」「戦略/計画」「分析」、が夫々の役割を担うことになる。

QRからe-コラボレーティブ・コマースへの発展

 1985年に産声を上げたQRは、1988年に「第一回QR大会」を開催しその活動を推進していった。QRの成功を基本にスーパーマーケット業界を中心としてECR(エフィシエント・コンシューマ・リスポンス)活動を開始したのは1993年である。

 1995年にはWal-MartでCFAR(関連記事)パイロットが実施され、その後CPFRに進化し急速な進展を示し、QRで始まった企業間連携は格段の進化を遂げている。米国内企業の育成と企業間の効率化を目的として始まったQR活動は、e-コラボレーティブコマースとしてグローバルに拡大する流れになっている。

日本での対応

 ひるがえって、日本の流通業の現状をみると、生産の移転と大量の消費財の輸入攻勢に製造業は苦しんでいる。特に、小売業は大手グローバル企業の進出とデフレ経済の進展の中で、成長を著しく損ねている。

 さらに、e-コラボレーティブ・コマースへの取り組みは遅々として進まず、業界内はもとより業界間が一体となったイニシアティブは登場していない。複雑な流通経路、特異な取引習慣、個別の取引手順、各種規制などは、製造や中間流通、小売というそれぞれの業者にとって結果としてマイナスに働いており、全体最適を損なっている。

 取引企業間の関係においても、情報の共有は限られており、パワーによる関係で真のコラボレーションが取られているとは言えない状況だ。

 流通業のグローバル化の中、各国ではe-コラボレーティブ・コマースに向けた取り組みがその勢いを増している。流通業界における国際競争力をつけるためにも、7つの階段を一歩一歩確実に昇っていくことが今求められている。


著者:舟本秀男氏(舟本流通研究室代表)

日本NCRにおける33年間の業務経験と、5年間の米国勤務経験を基盤に、流通業を革新するための最新の取り組みを研究することで知られる。平成11年に舟本流通研究室設立、米国ムーンウォッチメディア社と業務提携し『リテール・システムズ・アラート』日本語版を発行。日本経済新聞が主催するRetail Technology Summitの企画も手がける。

 経済産業省委託、2002年「SCM推進のための商慣行改善調査委員会」委員。総務省、2002年「国際競争力回復のための企業IT化戦略研究会」委員、ほか。著書『流通再生戦略(同友館)』『図解CPFRがわかる本(日本能率協会マネジメントセンター)』など。

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