オープンソース化されたSolaris――コミュニティー、派生ディストリビューション(3/3 ページ)

» 2005年12月12日 10時17分 公開
[Stephen-Feller,japan.linux.com]
前のページへ 1|2|3       

GPLとCDDLの軋轢

 11月7日に登場したNexentaは、BeleniXとSchilliXを合わせたよりも大きな関心と議論を呼んだ。OpenSolarisカーネルを使ってDebianベースのOSとして開発されたハイブリッドだったからだ。おまけに、Ubuntuのパッケージの大半を含んでいると同プロジェクトの開発者アレックス・ロス氏は述べている。

 「Nexentaの登場は、オープンソース開発者に新しい可能性を示しました。しかし、衝撃的な登場もさることながら、わたしたちのスタッフ全員がNexentaを使っていることが示すとおり、すでにして十分な安定性を持っているという点にも注目してください」

 確かに登場したばかりにしては安定しているが、これは開発済みのものを多く採用しているからである。もっとも、ロス氏に言わせれば、小さなNexentaチームがあらゆるものを一つにくみ上げたということになる。

 ロス氏によると、ユーザーは初見から簡単に扱うことができるという。なぜなら「Linuxコンピュータ、より正確に言えばUbuntu Linuxコンピュータのように見える」からである。ただし、Nexentaの特徴を出すため、この外観は将来変更されるだろうという。もっとも、その優先度は低い。優先するのは、むしろ、Nexentaで使えるパッケージの追加である。Nexentaには、すでに2300パッケージが搭載されている。

 Nexentaが議論の嵐を巻き起こしたのは、極めて「GNU中心的」性格のゆえだとロス氏は言う。NexentaはOpenSolarisカーネルとコア・ランタイム――Sun C Libraryを含む――を使っているが、それ以外はGNU関連オープンソースソフトウェアなのである。しかし、論争は、Debianのdpkgパッケージ管理システムの使用から始まった。

 Debianの開発者やコミュニティーメンバーの一部は、SunのCommon Development and Distribution License(CDDL)の下でGPLソフトウェアが使われていることを問題視した。CDDLとGPLには互換性がないという見方があるのだ。コミュニティーが提起した問題はDebianのGPLバイナリを異なるライセンスのライブラリとリンクできるかという点であり、多くのユーザーはできないと考えている。

 こうしたNexentaに対するコミュニティーの反応に、Debianの創設者イアン・マードック氏は失望感を表明し、NexentaがDebianコミュニティーに対して適切な対応をしなかったかもしれないことは認めるが、使用がライセンスに抵触するという印象は持っておらず、むしろSolarisが改善される可能性に「期待している」と述べた。

 そして、ライセンスについての主張が正しかったとしても、その事実もって指弾して得られるのは専門性に基づく道義的勝利だけであると、Nexentaを批判した人々に対して忠告している。

 これに対して、Debianの開発者ジョシュ・トリプレット氏は次のように反論した。「GPLソフトウェアをSolarisなどの非GPL互換のライブラリを持つシステムに配布することは許されても、GPLソフトウェアはSolarisとそのライブラリと『共に』配布することは許されません」

 「GPLソフトウェアを非GPL互換のlibcなどのシステムライブラリを使ってコンパイルすれば、それらのライブラリの派生物はGPLソフトウェアにはならず、逆に、GPLソフトウェアのバイナリは非GPL互換のlibcなどのシステムライブラリの派生物になります。そのようなバイナリは、配布することができません」(トリプレット氏)

 これに対するマードック氏の答えは次のようなものだった。「GPLの目的はGPLコードの派生物がプロプライエタリになることを禁ずることで、GPLアプリケーションが非GPL互換ライブラリにリンクされることを禁ずるものではありません。前者は目標であり、後者は目標を追求するための専門的な事柄なのです」

 ロス氏は、コミュニケーションの面でNexentaに問題があったことは認めるが、Nexentaのために創設された企業Nexenta Systemsは「Nexentaに関する仕事に着手する前に必要な注意義務」を果たしていると述べた。

 「わたしたちは良識を信じたいと思います。別系統のフリーなオープンソフトウェア同士を一緒に配布できないという主張は良識に反します。『フリー』の意味を取り違えているのです。それを認めれば、次に来るのは『平和は戦争である』でしょう。そうなれば、一気にオーウェルの描いた1984年の世界です」(ロス氏)

 NexentaとDebianのあつれきが解消される一方、OpenSolarisの派生物の製作にもコンポーネントのほかのOSへの移植作業にも滞りはない。移植で最も知られているのはSolarisのトレースツールであるDTraceのFreeBSDへの移植で、デビン・オデール氏が手掛けている。

 オデール氏のブログによると、予定された第1目標は達成し、バイナリは10月9日にリリースされた。Sunはオデール氏が開発に使っているハードウェアをサポートするという形で、FreeBSDTraceの仕事を支援しているという。

オープンソースの未来形か

 ネットワークストレージ企業Network Applianceの開発者マイク・イースラー氏は、次のような見解を述べている。すなわち、OpenSolarisコミュニティーはおそらく「オープンソースコミュニティーの未来形」だろう。知名度があり、組織があり、Sunによる手間暇掛けた指導があるからだというのである。

 「Sunはopensolaris.orgを分かりやすく参加しやすくし、『部外者』にもオープンにしています。重要なのは、そうした努力のお陰で、ほかのオープンオペレーティングシステムよりもOpenSolarisの方がはるかに『部外者』にとって活動しやすいことが知られつつあるという点です」

 「活動のしやすさは参加を促し、参加する人から貢献する人へのステップアップもすぐです。こうした活動のしやすさが市場においてOpenSolarisをほかのオープンソース・カーネルよりも有利にするかどうかはまだ分かりません。しかし、opensolaris.orgの基本的な枠組みと実践はオープンソースコミュニティーの未来形を表しているのかもしれません」

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ