トレンドが求めたホスティングサーバの条件インターネットサービスの新基準(2/2 ページ)

» 2005年12月14日 16時59分 公開
[大澤文孝,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 VPSは、大別すると共用サーバに近い分類だが、利用者のサーバ領域を仮想的に丸ごと実現し、それぞれにroot権限を与えている。そのため、root権限がないために共有サーバではインストールできなかったライブラリなども、VPSではインストールすることが可能なのだ。ただし、ここで誤解してはならないのは、VPSは安価な専用サーバではないという点だ。

 VPSでは、それぞれのユーザーが平等にサーバを共用できるよう、「CPU資源」「メモリ」「同時ファイルアクセス数」などを制限している。これらの制限は、Webアプリケーションによっては実行制限に当たる場合がある。

 まず、CPU資源の制限によって、Webアプリケーションの実行時間は制約される。例えば、Webアプリケーションで時間がかかる処理をすると、途中で強制終了する可能性がある。次にメモリ不足から、Webアプリケーションが期待通りに動かないケースもあり得る。メモリを大量に消費する例としてはサーバ上の画像処理が挙げられる。制限のあるVPSでは、アップロードされた画像容量が想定外の場合、サムネイルの作成処理でメモリ不足となってしまう可能性がある。

 同時ファイルアクセス数の制限によって、データベースへの接続数が不足することもある。つまりVPSは、「root権限があるから何でも可能」というわけではなく、「サーバのCPUやメモリ性能が十分であれば問題ない」というものでもない。VPSは、あくまでもroot権限を備える共用サーバと考えるべきであり、専用サーバとは異なる性質を持つものだ(図2)。

 しかしVPSに大きなメリットもある。それはコスト面でのメリットはもちろんのこと、サーバ環境の複製構築が容易なことだ。

 VPSは、それぞれが仮想化された環境なので、すべての設定ファイルが、仮想化されたディレクトリ下に存在する。そのため同じVPSサービスをもう一つ契約し、コピーすれば「実環境とテスト環境として使う」「実環境とバックアップ環境として使う」といった処理が容易なのだ。

図2■VPSはサーバのリソースを平等に共有する。VPSでは平等に動作するようにするため、それぞれのリソースに制限がある。つまりVPSのサーバのスペックをそれぞれのユーザーが占有できるわけではない

リブートや再インストールできるホスティングサービスを選ぶ

 総合的に見ると、Webアプリケーションを実行するに望ましい十分な環境は、やはり専用サーバである。しかし専用サーバであれば、サーバ自体の構築に手間が掛かるケースも多い。このような問題を解決するのが、Web管理ツールだ。VPSでも同じようなWeb管理ツールが搭載されていることが多いため、専用サーバだから容易だというわけでもない。

 最近のホスティングサービスは、Webブラウザから各種管理ができ、ソフトやライブラリ(パッケージ)をインストールしたり、ユーザーアカウントやデータベースを作成できるものが増えている。このような機能を持つホスティングサービスは、概して使い勝手がよい傾向にある。さらに、セキュリティホールへの対策をするためにパッケージの自動アップデート機能も提供されていれば、保守管理の手間が軽減できるだろう。

 ところで、Webアプリケーションの実行環境としてサーバ環境を選ぶ場合に見過ごしがちだが重要なものとして、「サーバのリセット」や「工場出荷時に戻す」といった作業が可能かどうかも重要だ。開発したWebアプリケーションのトラブルでサーバが応答しなくなるケースもあり得るからだ。

 ホスティングサービスによっては、サーバが稼働しているかどうかをpingなどで確認し、応答がない場合には自動的にリブートを行う「オートリブータ」と呼ばれる機能を提供している場合がある。オートリブータ機能が提供されていれば、知らぬ間にサーバがフリーズ寸前になってしまっても、自動復帰する可能性が高いので有利だろう。ただし、再起動中にサービスが正常に自動起動するように、日ごろから整備しておく必要もある。

 さらに幾つかのホスティングサービスでは、シリアル接続装置によって、外部からコンソール画面をそのまま操作できるものもある。このような機能が提供されている場合には、シェル設定を誤って起動しなくなった時でも、リモート修復することが可能だ。

 Webアプリケーションを開発する際には、単にファイルを配置するだけではなく、何度もリモートからのテスト作業を実行することになる。このようなリモートからの操作性も、重要なポイントだといえる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ