今はやりのILM導入、その前に押えたい6つのポイント今どきのバックアップ入門(3/3 ページ)

» 2006年07月28日 08時30分 公開
[堀江徹,ITmedia]
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4.データ管理の拡張性

 さらにアーカイブデータの保存期間は、それを格納しているストレージデバイスの製品寿命よりもはるかに長い、という問題がある。将来、使用しているアプリケーションが変更されたり、ストレージデバイスが別の機種に置き換えられた場合でも、データを問題なく利用できるか、そのことを設計段階から考えておかなければならない。

 そのためには、ILMを実現するシステムが特定のハードウェアに依存しないという点が重要な検討ポイントになる。特にストレージシステムでは、SAN、NASなどさまざまな装置が使用される。メディアにも、磁気ディスク、光学ディスク、テープなどがさまざまに使われる。これらの特性を十分に検討して、データの特性や運用形態に合わせた選択を行おう。

5.データの運用に関する安全性

 ILMの設計と運用においても当然、安全性と信頼性を確保することは重要な目標となる。例えば、データをアーカイブする際に安全に移動することができなければ、システムやコンポーネントの障害に対処する際に、大きなリスクが伴うことになる。それだけでなく、必ず事前にバックアップを取得する必要も発生し、IT管理者にとっては大きな負担増加につながる。

 ILM製品ベンダーはさまざまな機能を提供することで、これに対する安全性と信頼性を確保しようとしている。例えば、Symantecのアーカイビングソフトである「VERITAS Enterprise Vault」では、データの移動時でもアーカイブの対象となるデータを最低2カ所に保持する仕組みになってる。これにより、例外的な障害が発生した場合のデータ喪失のリスクを削減している。

6.企業による情報の活用(コンプライアンスへの適応)

 通常のデータ保護ソリューションであれば、エンドユーザーのためにバックアップデータは必要に応じて速やかに復元されることが求められる。しかし、これがコンプライアンスに適応するためのアーカイブとなると、データにアクセスできるだけでなく、企業の法務部門や経営責任部門が必要に応じて企業内のすべてのデータを検索、監査できることが必要だ。

 最近では、業務メールの内容に関して、毎日、各部門の上司が部下の全メールの内容を確認しているという、驚くようなケースも出てきているようだ。少し考えてみると分かるが、企業側がすべての社員のデータに目を通すということは実際、現実的ではない。そこで、アーカイビングのソリューションには、急増するデータに対応できる拡張性と企業のビジネスモデルに合った監査内容を実施できる機能が必要だと分かる。併せて、企業内での監査に関して、関連部署がそれぞれの立場で内容をチェックしていくレビュープロセスや、同様にデータの内容を確認・承認するようなワークフローにも対応できるとなお良いだろう。

 米国の法規定の中には、データの保管や速やかなデータの開示に関して、データ作成後から数年間、速やかな検索およびデータの開示・提供が可能な状態で保管されていることを条件にしているものもある。既にこの連載で何度も触れてきたが、会計基準の厳密化で企業の財務データや電子メールをより長期間保存することや、データの完全性を保障するためのWORMデバイスの利用が今後求められてくるのは間違いない。

 個人情報保護法や2008年に施行されると言われている「日本版SOX法」などの法規制も含め、コンプライアンスに適応するデータ管理システムの重要性はますます高まっている。ILMの手法導入するには、こういった点にあらかじめ考慮しておくことが欠かせない。

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