インテル® Itanium® プロセッサ ファミリの高いポテンシャルは、知られているようで意外と知られていない。かつてしばしば言われたクロック神話など、真実とはほど遠い議論で疲弊することのないよう、デュアルコア インテル® Itanium® 2プロセッサを搭載したサーバを選択することは、本当に有益なのかをデータを交えて考える。
広がる顧客やパートナの支持、さらにアクセルを踏み込むインテル Itanium 2 プロセッサ ファミリ
第1回 インテル Itanium プロセッサ ファミリの未来は「バラ色」か?
第2回:思わずインテル Itanium プロセッサ ファミリを選択したくなるこれだけの理由
第3回:HPの戦略に見るインテル Itanium プロセッサ ファミリの真のメリット
インテル® Itanium® 2 プロセッサ×HP Integrity特別対談
衝撃のプロセッサ事情――インテル® Itanium® 2 プロセッサという“決断”
“場当たり”的なサーバ選びから脱却せよ!――HP Integrityサーバの実力
ヒューレット・パッカードが挑んだ世界最大級規模のシステム統合がもたらしたもの
ついに登場した新チップセット「HP sx2000」、その魅力を探る
ビジネス変革の切り札--TIBCOのリアルタイムソリューション
動き始めたデュアルコア インテル® Itanium® 2 プロセッサ、本当の大変革がここから始まる
企業の“今日”を見せるインフォマティカ――全社規模のデータ統合
真のBPMの実現に必要な機能と性能を備えた「Hyperion System 9」
前回(第1回)は、インテル® Itanium® プロセッサ ファミリ ベースのサーバの現在の市場動向について解説した。インテル Itanium プロセッサ ファミリは、5年間という短い期間でSPARCやPOWERと十分に対抗できるエコシステムを構築し、出荷金額を伸ばしている。この高い成長性は、各ベンダーの努力に加え、インテル Itanium プロセッサ ファミリ自身の高いポテンシャルに起因する部分もある。第2回目では、インテル Itanium プロセッサ ファミリの機能を中心に、インテル Itanium プロセッサ ファミリを選ぶメリットについて解説する。
第1回で示したようにデュアルコア インテル® Itanium® 2プロセッサは、クワッドコア(4コア)を採用するPOWER 5に対抗するだけの十分な性能を有している。これは、インテル Itanium プロセッサ ファミリが採用するEPIC(明示的並列命令コンピューティング)テクノロジーのポテンシャルの高さの証左となろう。EPICは、インテルとヒューレット・パッカード(HP)が共同開発したサーバプロセッサ向けアーキテクチャーで、インテル® Xeon® プロセッサなどが採用するx86アーキテクチャーや、SPARC/POWERなどのRISCアーキテクチャーとは異なり、命令間の依存関係や並び替えをプログラムのコンパイル時に処理するのが特徴だ。これにより、プロセッサが並列実行できる命令数を増やせるほか、プロセッサの命令デコードが不要になるというメリットがある。
EPICでは、3つの命令スロットと1つのテンプレートフィールドから構成される128ビット固定長の「バンドル」が実行単位となる。テンプレートフィールドは5ビットで、命令と実行ユニットの組み合わせなどが定義される。また命令スロットは41ビット長で、ここに命令が1つだけ入る。インテル Itanium 2 プロセッサでは、1クロックで2バンドル(コア当たり)の実行が可能であることから、1クロックで最大6命令が実行できることになる。コンパイル時点で、並列実行可能な命令を事前に組み合わせることから、バンドルに対する命令充填率は高い。一般的なRISCプロセッサが並列実行できるのは1クロック当たり最大4命令程度なので、アーキテクチャーの面でも高い性能を実現していることになる。
強調したいのは、アーキテクチャーがx86アーキテクチャーなどと根本的に異なるという点である。プロセッサナンバーが導入されたことで以前ほどではなくなったにせよ、無意識のうちにクロックで比較してしまう向きも少なくない。インテル Itanium 2 プロセッサのクロック周波数はインテル Xeon プロセッサのそれに比べると低いが、そのことは性能とは別次元の問題であることは常に留意しておきたい。
今後、製品を選択する過程で考慮すべきポイントを挙げるなら、利用モデルに合致した機能を有しているかどうかという点のほか、性能と消費電力の関係であろう。多くのプロセッサが搭載されるハイエンドサーバでは、性能とともに省電力化も重要な課題となっている。デュアルコア インテル Itanium 2 プロセッサでは、従来のインテル Itanium 2 プロセッサに対し、最大20%の省電力化(従来のインテル Itanium 2 プロセッサは130W)と、消費電力当たり約2.5倍の性能向上を実現している。これはデュアルコア インテル Itanium 2 プロセッサから製造プロセスを90nmプロセス技術に微細化したことに加え、低消費電力を目標に開発が進められたことによる。次世代のデュアルコア インテル Itanium 2 プロセッサでは、製造プロセスが65nmに微細化されることから、さらに消費電力が低減されることになる。
クラスタリング技術の進歩からインテル Xeon プロセッサなどを搭載するIAサーバでも、十分に高い性能を発揮するようになってきている。事実、複数のIAサーバのクラスタリングによって高い性能を実現し、基幹システムなどに利用する企業も出てきている。IAサーバが、その性能向上と価格性能比の高さによって、徐々にRISC/UNIXサーバをハイエンドサーバ市場に追い詰めたのは、歴史が語る事実である。歴史は繰り返すという言葉通り、ハイエンドサーバ市場においても、数年後にはIAサーバが席巻するのではないかという人もいる。
しかし個々のパーツの信頼性が高くならなければ、システム全体の信頼性におのずと限界が訪れるのは紛れもない事実だ。インテル Xeon プロセッサなども、信頼性を向上させる機能を搭載しているが、信頼性とともに価格が重視される市場向けということもあり、信頼性向上機能という点ではインテル Itanium プロセッサ ファミリには及ばない。プロセッサレベルはもちろんのこと、インテル Itanium プロセッサ ファミリではメインフレームの技術をふんだんに盛り込んだ非常に信頼性の高いシステムが提供されている。
製品名 | インテル® Itanium® 2 プロセッサ | インテル® Xeon® プロセッサ |
---|---|---|
性能 | 非常に高い64ビット・アプリケーションの処理能力/32ビット・アプリケーションとの互換性 | 優れた32ビット・アプリケーションのプライス、パフォーマンス/64ビット環境へのゆるやかな移行が可能 |
スケーラビリティ | 512ウェイ | 16ウェイ |
メモリアドレス指定能力 | 最大1ペタバイト | 最大1Tバイト |
RAS(信頼性・可用性・保守性) | メモリスペア、チップキル、ECCなどに加え、インテル キャッシュ・セーフ・テクノロジー、拡張マシン・チェック・アーキテクチャー(MCA)などをオンチップ機能として提供 | メモリスペア、チップキル、ECCなどをオンチップ機能として提供 |
プラットフォーム | 高いバス帯域と大きなSMP構成をサポート | 幅広い処理に対する高い性能とバランスの取れたバス帯域を提供 |
表1:インテル® Xeon® プロセッサとの比較
自動車において、いくら小型車の性能が向上しても、大型高級車の性能や安定性にかなわないのと、ある意味同じことがIAサーバとインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバの間にも当てはまる。企業の基幹システムなどに用いられるというその用途から、高い信頼性が求められるインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバでは、そこにかけるコストがIAサーバとはけた違いだからだ。
例えば、デュアルコア インテル Itanium 2 プロセッサでは、開発コード名「Pellston」で呼ばれていた3次キャッシュの信頼性向上技術「インテル キャッシュ・セーフ・テクノロジー(ICST)」をサポートする。これは、ECCで修正できないエラーが発生すると、キャッシュラインに再度書き込みを行い、修正不可能なエラーであると確定した場合、そのキャッシュラインを無効化するというものだ。3次キャッシュが大容量化している現在、キャッシュの障害も増える傾向にある。ICSTのサポートにより、キャッシュの障害によるシステムダウンを未然に防ぐことが可能になる。
また改良型マシン・チェック・アーキテクチャー(MCA)と呼ぶ、エラーのリカバリ処理をサポートしている。インテル Itanium プロセッサ ファミリには、PAL(Processor Abstraction Layer)/SAL(System Abstraction Layer)エントリポイントと呼ばれるファームウェアコード群が内蔵されており、ハードウェア自身で修復できないエラーに対して、このエントリポイントを介したソフトウェアによるハードウェア制御で可能な限りのリカバリ処理が行える。ファームウェアとOSが関与することで、複雑なエラーでも訂正と回復が可能になる。MCAにより致命的なエラーは、システムが自動的にリセットを行うことで、メインフレームクラスの可用性が実現可能であるとしている。
インテル Itanium 2 プロセッサでは、キャッシュメモリやシステムインタフェースにエラー保護機能が実装されており、エラーが発生した場合、それが検知可能となっていた。デュアルコア インテル Itanium 2 プロセッサでは、さらに分岐予測ユニットや整数レジスタ/浮動小数点レジスタなどもエラー保護の対象となっている。これにより、さらなる信頼性の向上が実現しているという。
製品名 | インテル® Itanium® 2 プロセッサ | インテル ® Xeon® プロセッサ MP | インテル® Xeon® プロセッサ |
---|---|---|---|
データバス上のエラー回復 | ○ | × | × |
ロックステップ | ○ | ○ | × |
不良データの封印 | ○ | × | × |
キャッシュの信頼性 | ○ | × | × |
メモリ SDEC、ダブルビットのリトライ | ○ | ○ | ○ |
メモリスペア | ○ | ○ | ○ |
パーティーショニング | ○(ノード) | ○(ノード) | × |
電気的に絶縁されたパーティーション | ○(ノード) | ○(ノード) | × |
表2:インテル® Xeon® プロセッサとの比較
このようにインテル Itanium プロセッサ ファミリには、インテル Xeon プロセッサやRISCプロセッサと比較にならない信頼性向上機能を実装している。さらにプラットフォームレベルとなると、各ベンダーによるさまざまな信頼性向上機能が追加されており、メインフレームを超えた高い可用性を実現している。インテル Itanium 2 プロセッサ ベースのサーバが、すでに金融機関などで多く採用されていることも可用性の高さの証明となろう。
信頼性という点では、インテル Itanium プロセッサ ファミリ自身の継続性もユーザーにとっては重要だ。インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバを採用したとたん、インテル Itanium プロセッサ ファミリのリリースが中止されてしまったのでは、投資したアプリケーションやサポート要員の教育などが無駄になってしまうからだ。特にメインフレームを含むハイエンドサーバ市場においては、事業の継続性が強く求められる。インテル Itanium プロセッサ ファミリ自身が継続的にリリースされるかどうか、という不安を持っているユーザーもいることだろう。この不安に対する回答として、インテルはインテル Itanium プロセッサ ファミリに関して常に3世代先までロードマップを公開している。ほかのプロセッサのロードマップには見られないこの姿勢こそ、インテル Itanium プロセッサ ファミリの継続性を保証する意味がこめられていると見るべきであろう。
このようにインテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバは、高い性能と信頼性を実現しており、製品の継続性も保証されている。特に高可用性が求められる基幹業務向けサーバにおいて、インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバは最適な選択である。インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバを選択することで、安定したビジネス環境を得ることが可能になるからだ。インテル Itanium プロセッサ ファミリ ベースのサーバを選択すれば、現時点で最高の信頼性を持つシステムが選択できるだけでなく、将来の機能拡張に柔軟に対応可能なシステムを手に入れることができるのだ。
次回(第3回)では、インテル Itanium プロセッサ ファミリのエコシステムの拡大による選択肢の幅広さが生むメリットについて解説する。
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制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年12月31日