―― 今、数あるITベンダーの中で「いい仕事してるなぁ」と思うベンダーは?
Googleかな。やはり超巨大グリッドは偉大です。将来はGoogleに行くのかとか聞かれますが、Googleは完成してしまっていますからねぇ。分散システムを一から作るというのなら喜んで参加したいですが(笑)。
Googleの分散システムってかなり特殊な制限の下でアルゴリズムを記述しなければならないので使いにくいんですよね。MapReduceは頭がMapReduceで思考していないと使いづらいんですよ。だからレンダリング向けのMapReduceに相当するものを未踏で開発したのです。最近レンダリングのコミュニティーでは、「CPUでやってるレイトレイシングなどをMapReduceでやるのは難しいんじゃないの?」「GPU関連で使われているアルゴリズムを移植する方がうまくいくんじゃないか?」とか話をしています。
―― 若い方が「天才」と呼ばれてしまうことについて、また、「若手のプログラマー」が日本で育たない理由はどの当たりにあると思いますか?
「天才」「スーパークリエータ」というすごい肩書きをもらってしまったので、恥ずかしくないように技術を磨いていきたいですね。
「若手のプログラマー」が日本では育っていないということですが、わたしは育っていると思います。インターネット上で知る範囲でも、すごい中学生/高校生は山ほどいます。ただ、ある程度専門的な知識を求めると、どうしても英語の文献に当たらざるを得ないので、そこでハンデがあるとは感じますね。
―― 今の時代、若いウチにこれをやっとけば幸せになれるよ、というものがあれば
私自身まだ経験が浅いので何ともいえませんが、技術的にホットなトピックと、古典的な基礎と、両方押さえるのが重要ですね。片方だけだとバランスが悪くなってしまい、結果として両方生かせないと思います。
―― 未踏の先輩でもあるソフトイーサの登大遊さんのように、起業の考えはありますか?
今のところありません。常に新しいことをコーディングしていきたいので、製品クオリティに仕上げることよりも、次の作品を作りたい気持ちが強いです。
―― 今の研究が一段落したら、どんな研究をしてみたいか?
人工知能は一度やってみたいですね。いろいろと秘密のアイデアがあります。
―― 鏡に物体を映すと左右が反対になるのに、上下はそのままなのはなぜですか? 世に言う「ビルゲイツの面接試験」と仮定して、答えてみてください
え、マジレスすれば、鏡映変換と回転変換は数学的に別のモノです。3x3の変換行列を考えてやると、前者は行列の行列式が-1になるので。
―― 大学卒業後はまた米国に戻りたい?
そうですね。こういうと、「日本から人材が流出」とか書かれそうで誤解を受けそうなのですけど。大学院に進学するにしても、例えばCG関連であれば、ハリウッドと技術連携ができている研究室は日本にあるか? 真の意味で産学連携ができている研究室がどれほど存在するか? とか考えるとやはり米国に目が向きますね。というか、レンダリングの世界に比べればこの世界は小さなものですよ。そんな小さな世界でナショナリズムとかいっていても仕方ないと思うのですけど、どうですか?
―― この質問に項目を追加するとすれば、どんな質問を加えたいですか?
「UIにこだわりはありますか?(キーボード/マウス、Webデザイン、GUI/CUIなど)」
―― あなたが「この人の回答が見たい」と思う人を3人挙げてください
未踏ユースつながりで、巨大ディスプレイの上田さん、prezvision&動画広告システムの竹村さん。Web2.0なのにバイナリアン(バイトコード的な意味で)なbeinteractiveのyossyさん。
―― 未来の開発者たちに一言
まだわたしも若いのでなんとも言えませんが、取りあえず数学は真面目にやっておいた方がよいと思います。
―― 2007年1番のニュースは?
私事ですが、未踏ユースに参加して、賞を頂けたことでしょうか。蜂須賀さん(編注:蜂須賀恵也氏)のレンダラや笹田さんのYARVを見て単純にすごいなと思い、挑戦するだけ挑戦してみようと思い今に至ります。未踏でできたつながりは自分にとって非常に有意義なもので、このつながりを大事にしていきたいと思います。
―― 自分が実際に会ったことがある人の中で、「この人に回答してほしい」という人は?
未踏の先輩でもあり、優れたActionScripterでもあるbeinteractiveのyossyさんにお願いしようと思います。
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