宿泊客にも提供するザ・ペニンシュラ東京の新システムモバイルセントレックスのススメ(2/2 ページ)

» 2008年02月27日 07時15分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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従業員の業務効率もアップ

 モバイルセントレックス導入は、従業員の業務環境でに利便性をもたらした。

 ザ・ペニンシュラホテルズは、世界各国の拠点同士をIP VPN回線で接続している。各拠点にIP-PBXやIPゲートウェイ対応のPBXが設置されているため、従業員が内線で通話をする際にワンナンバーで全世界の拠点に発信できるという。東京では、さらに無線LANを経由して館内のどこにいても内線を利用できるという最先端の仕組みになっている。

 内線通話以外にも、コミュニケーションを円滑にする仕組みを取り入れている。N902iLはショートメッセージ(SMS)機能を搭載しているため、従業員に対して管理者がPCから業務連絡をSMSで配信できるようになっている。基幹システムの「ELV(Electric Light Volume)」とも連携しており、業務プロセスに応じた連絡事項を自動配信するようにもなっている。

 「例えば、宿泊客がチェックインすると客室のある階のスタッフにメッセージが送られる。また、ハウスキーピングサービスを呼ぶボタンが端末に用意されており、宿泊客がボタンを押すと担当者の端末へ自動的にメッセージが送信され、担当者が客室を訪問する」(ズルネディ氏)。宿泊客の動きや希望するサービスに応じて、従業員への連絡が円滑に行われるため、サービス品質が向上するという。

目立たない無線LAN機器

 同ホテルのシステムは顧客サービスの生命線となるだけに、通信が途切れるなどのトラブルを最大限に回避するよう配慮したと、ズルネディ氏は話す。「客室やレストラン、バンケットルーム、エレベーター内も含めて、ビル全体を99.9%のカバーをすることを目標にした」(同氏)

 そのカバレッジを実現するため、全館で450台以上の無線LANアクセスポイント(AP)を配置した。APの配置作業はNECが行っている。

 同ホテルの無線ネットワーク構築を担当した海外ネットワークソリューション事業部グループマネジャーの市井博雄氏は、「できるだけ宿泊客の目に触れないようAPを天井の裏側に配置している。設置スペースを設計段階から確保する必要があり、建築士やインテリアデザイナーと入念な打合わせを重ねて設置場所を決めた」という。

 APの設置作業は、各フロアの天井部分の仕上げをする直前に行った。電源や配線の設置は予め済ませ、AP設置に不都合がないよう実際に設置するAP数よりも多めに電源や配線を確保した。「家具など調度品が無線に与える影響を事前にシミュレーションできないので、調度品の納入が終了してから無線の状況を検証し、不足している部分には追加のアンテナを配置するなどで対応した」(市井氏)

 このため、AP設置後に大規模な追加工事をするような事態にはならず、オープン直前まで入念にテストを繰り返し、無線LAN網が完備していることを確認した。ズルネディ氏は、「開業後に問題は発生していない。端末の故障に備えて予備端末を用意しているだけで安定した運用が実現している」と話す。

 ザ・ペニンシュラ東京でのモバイルセントレックス導入は、宿泊客と従業員の双方に利便性をもたらし、ホテルサービスの品質向上に寄与しているといえそうだ。

 「日常業務でこのシステムには満足している。サービスや業務効率をさらに良くするためのアイデアを考えており、ザ・ペニンシュラホテルズのほかのホテルでも、利用環境が整えば導入を検討するだろう。日本では積極的に利用したいシステムだ」(ズルネディ氏)

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