林氏 別井さんはPDAとかは使いますか。
別井氏 全く異なる観点で話をさせて頂きますが、iPhoneに対してわたしが画期的だなと驚いたのは、ユーザーインタフェースなんです。これは、任天堂のWiiのあのリモコンを使ったときの感覚に、すごく近いものが自分の中にありました。
以前は、「いつでも、どこでも、これがしたい」という発想だったと思います。PCがあれば音楽も聴けるという感覚です。そうした流れの中、日本では携帯電話機が登場しました。メールと通話だけであれば、PCよりも携帯の方がいいのです。
用途をメーカー側がしっかりとリサーチすれば、デバイスはさらに進化すると思います。いままでは多機能であることを良しとしてきましたが、これからは使いたいサービスを使いたいときに使う世界に変わり、サービスに合わせてデバイスの形もインタフェースも変わっていくと思います。
冨田氏 iPhoneのユーザーインタフェースの話で思ったのですが、ボタンがほとんどないですよね。工業デザインの話というわけではありませんが、これまではデバイスのサイズがその用途を決定していました。しかし、iPhoneはその決定をひっくり返す力を持っていると感じます。デザインというものが、もっと注目されてもいいんじゃないかなと思います。
@ITさんはソフトウエア開発とかサーバ運用管理に強いメディアですが、一方でbuilderはWeb開発に強いです。そして、Web開発はデザインとは切っても切り離せません。2001年くらいに、ビジネス・アーキテクツの森田雄氏が、それまでコーダーと呼ばれていたHTMLを書くエンジニアのことを、マークアップ・エンジニアと呼ぼうと言い出しました。情報がどう設計されているのか、Webサイトをどう設計するのか、情報をどう伝えるかということを、きちんとやれるエンジニアになりましょうという思いが込められています。米国で使われているフロントエンド・エンジニアという言葉に近いのですが、もう少し情報デザイン寄りの概念です。
三木 皆さんの話を一通りうかがって、もっともな意見ばかりだなと思いました。あえて違うことを言うのがはばかられますが、IT系メディアの皆さんがiPhoneを大好きであることを重々承知の上で言います。やはり日本の携帯ってすごいと思います。よくここまで進化してきたなと。
ガラパゴス論だとかありましたけれど、そういうマイナス面を差し引いたとしても、常時つながっていて通信できる端末で、通話するだけではなく、メールやブログを書いたり、いろいろなことができます。コンテンツもどんどん出てきます。米国にいると、こんなに豊富なコンテンツに触れられる人って、ほとんどいないんです。こうした意味では、日本はすごく幸せだと思います。
三輪氏 携帯ですと、今の三木さんの話ではありませんが、iモードによってかなりいろいろなサービスが出たおかげで、そこにつなげれば何でもできる状態になっています。
ところが米国ですと、iモードのようなサービスがありません。だから米国では、企業システムにつなぐという専門的な方向に行きました。日本の事情とは、ちょっと世界(下地)が違ったのかなと思います。逆に、日本で企業システムにつながる携帯のアプリケーションに何かあるのかというと、あまりありません。アプリケーションを携帯にインストールする下地も、ほとんどありません。
BlackBerryやiPhoneは、企業システムの端末として使うことも考えられている点も良いと感じます。日本でも企業向けの携帯電話サービスが出始めているのですが、企業システムにつなぐところが、まだちょっと具現化していません。iPhoneと同じ形である必要はありませんが、iモードのサービス上にSaaSを構築し、そこで企業システムを動かすとか、そういう面で発展すると面白いと思います。
林氏 2009年には、日本のキャリアからもAndroid端末が登場するでしょう。それはそれで楽しい話であり、エンタープライズとしても、きっと盛り上がれるでしょう。開発者の人も、携帯頼みは面白くないと感じるかも知れませんが、見方を変えてクラウドを使うためのデバイスとして携帯を見ると、いろいろな可能性が広がるのではないかと思います。
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