最後に、では、日本にチャンスは残されていないのかというと、そう性急な結論を出す必要もないと考えている。
前述のように金融危機は米国で理論レベルから実際の実用化まで行われ、それに使用されるプラットフォームもすべて、米国の製品で取りそろえられた。しかし、そのシステムもいまだに不完全なことが今回の金融危機で証明された。つまり、金融工学および複雑な金融商品のポートフォリオ作成やシミュレーションを行うには、現在導入されているシステムのレベルでは不完全だということだ。
もっと高性能な計算が可能なマシンの登場が望まれている。既にこの動きを察知して、米国では「デスクトップスーパーコンピュータ」というコンセプトが生まれ、それに沿った製品がCrayから発表されている。
また、最先端の科学技術分野で日米欧の競争はまだ始まったばかりだ。日本のスプリングエイトやCERNの高エネルギー加速器のように壮大な規模に驚いてしまいがちだが、実際にはそこで発生する大量のデータを貯蓄し、解析を行う処理が欠かせない。
そのために使用される高速処理コンピュータの開発競争も同時並行で進んでいるのだ。この分野では完全に日本と米国の一騎打ちだ。勝敗の見通しは現時点では立っていない。
今ノーベル賞を狙い進んでいるすべての研究には、最先端のコンピュータ技術が欠かせない。国を挙げての総力戦はこれからだ。
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