Appleのエキスパート、「Netbookは気が早い」予測不可能な市場の中で

Tech Superpowersの創業者でAppleエキスパートのマイケル・オー氏によると、AppleがNetbook市場でHP、Samsung、ASUSなどの企業と競争する場合には、同社は市場を再定義し、MacBook Airの売り上げに影響しないような製品を出すという。その製品はiPhoneやiPod touchに似通った形になりそうだ。

» 2009年03月12日 16時22分 公開
[Nathan Eddy,eWEEK]
eWEEK

 先週のASUSのNetbookの発表は、Netbook市場の認知度と信用度を新たなレベルに引き上げるものである。NetbookはノートPCよりも小型、軽量、安価ながらも、本格的なソフトウェアと機能が使え、しかも持ち運びが非常に楽であるというメリットを提供する。Dell、HP、Samsungといった大手メーカーがNetbook市場に参入する中、AppleのNetbookがそこに割り込む余地はあるのだろうか。Reutersの報道によると、Appleはその可能性を探り始めたようだ。

 3月11日付のReutersの記事は、台湾のタッチスクリーンメーカーWintekの関係者の話として、Appleが10インチのタッチスクリーンを今年第3四半期の納入予定で発注しようとしていると報じている。Wintekは現在、Appleの人気商品であるiPhoneのスクリーンを供給している。

 また3月9日には、AppleのNetbookが登場するのではないかという噂がネット上を駆けめぐった。「2社の台湾企業がそのデバイスの供給メーカーとして選ばれた」と台湾の新聞が報じたからだ。なお、Appleではコメントを避けている。

 ボストンに本社を置くAppleのリセラーTech Superpowersのマイケル・オー社長によると、こういった噂や憶測は慎重に受け止める必要があり、鵜呑みにしてはいけないという。「これらのサプライヤーの話が確かなのかどうかは疑問だ。Appleのエコシステムという視点から見れば、この製品を今すぐリリースするのが賢明だとは思えない」オー氏は話す。

 この噂に関する自身の考えをブログ記事にも書いているオー氏によると、不況の中で低価格PCをリリースする企業にはビジネスチャンスがあるが、Appleは景気や市場の状況に敏感に反応した製品をリリースしたことはないという。「わたしの見解では、まだ少し早すぎるように思える」とオー氏は語る。「おそらくAppleは試作品を急ごしらえで作っただろうが、彼らは市場の穴を埋めるために急いで製品を市場に投入するような企業ではない」

 同氏によると、Appleは2005年にそういった戦略を採用したという。Cingular Wireless(現社名はAT&T――iPhoneの独占キャリア)と提携して、「ROKR」というiTunes携帯電話を投入したのだが、この製品は“とてつもない失敗”に終わった。加えて、可搬性に優れ、豊富な機能を搭載したNetbookは、Appleの超薄型ノートPCであるMacBook Airのマーケティング戦略にも悪影響を与える恐れがある。

 「Appleが今、Netbookをリリースしたら、MacBook Airの売り上げに響くのは間違いない。彼らが500ドルのNetbookを出せば、MacBook Airはダメになるだろう。彼らがAirのような製品ラインを見捨てるとは思えない」(同氏)

 オー氏によると、AppleからNetbookタイプの製品が登場する可能性が低いのは、同社はデザインや製品に関してだけでなく、特定の製品を中心としたエコシステムに関しても綿密に計算しているからだ。AppleがNetbook型デバイスを発表するとすれば、それは500ドルのポータブルデバイスでできることについてユーザーの認識を改めさせることを狙ったものになるという。「彼らがこの市場に参入するためには、真に革新的なものをコンシューマーに提供できるという確信を彼らが抱く必要がある」と同氏は話す。

 オー氏の予測によると、Appleが投入するとすれば、iPhoneの2倍程度のサイズで、7インチのタッチスクリーン、iWorkのモバイル版およびBluetooth接続機能を備えたデバイスになるという。「iPhoneについていえば、彼らはVoIPアプリケーションを避けて通ってきた」と同氏は指摘する。「Appleが投入するモバイルデバイスが、AT&Tとの契約に縛られてないという理由でVoIP機能を搭載するのであれば、彼らは新たなアプリケーション分野を開拓できる。これは彼らにとって、自社のデバイス向けに大きな付加価値を生み出すチャンスになるだろう」

 とはいえ、「噂はあくまで噂であり、Appleが次にどこに行くのか予想するのは決して簡単ではない」とオー氏は注意を促す。

 「Appleが見当違いの機能を備えた見当違いの製品を出すというリスクは常に存在する。だが彼らがその失敗をしてから長い時間が経っており、Netbookはそのリスクを冒す価値のある大きなチャンスだ」と同氏は指摘する。

 「しかしわたしがこの何年かの間に学んだことは、Appleが彼らのエコシステムの中で何を創造しようとしているのか推測するのは不可能だということだ」(同氏)

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