社外に出たMS Officeドキュメントをコントロールするソリューション探訪(2/2 ページ)

» 2009年03月20日 06時00分 公開
[大西高弘,ITmedia]
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渡した後でもポリシー変更が可能

 設定ができるポリシーは、有効期限、印刷の許可、文書内のテキストやオブジェクトのコピー、文書内の編集、電子透かし、オフラインでの閲覧。ポリシー付与時には必ず暗号化が行われる。また、配布後にそれぞれのドキュメントがどのように利用されているかが確認できるログもとることができる。

 「こうしたポリシーは配布した後も変更することが可能です。取引先の誰かに渡した文書を後から閲覧を禁止させることもできますし、流出が判明した段階でストップをかけることも可能です。こうして管理されている文書は、キャプチャ画像をとることもできません。また印刷は可能という設定にしても、電子透かしを施す設定をしていれば、印刷段階でさまざまな形で透かしが入り、安易に他人にばらまくこともできなくなります」と福嶋マネジャーは話す。利用シーンとしてはどんなケースが考えられるのかも聞いてみた。

「ビッグローブドキュメントコントロールサービス」の概要

 「給与明細や資材や購買関連の資料、それから価格一覧などが明記された文書などを他社と共有するケースなどですね。給与明細などは本人は閲覧できても、他の人には見られないうようにしなくてはいけない。この場合は本人のみが閲覧できる設定をあらかじめ管理者が設定をし、配布することで安全が保てます。また価格などが細かく明記されている文書は、関係者だけが利用できるようにしたいのと同時に、一定期間が経過しそれらの数字が改訂されたときは、改訂版をスムーズに閲覧できるように誘導したいというニーズがあります。この場合は、まずポリシー設定を変更して各人にファイルを開くことを不能にして、その代わりに最新版をダウンロードするメッセージを送るように設定するのです」もちろん価格改訂などのスケジュールが分かっている場合は、最初にポリシーを設定するときに、有効期限を決め改訂版をダウンロードしてもらう誘導を決めておくこともできる。

 また暗号化ソフトを持ち込めない中国での活用を考えている企業も多いという。このサービスを利用すれば、ファイルを開こうとするときにオンラインで問い合わせをしていく形になるので、現地にソフトウェアを持ち込む必要はないからだ。

MS Officeドキュメントもコントロール可能

 また「ビッグローブドキュメントコントロールサービス」では昨年末に以前から多くのユーザーから要望のあったサービスを追加している。それは、MS Officeのファイル(Word、Exel、PowerPoint)に対するポリシー付与だ。これまではMS Officeのファイルに対しては一度PDF形式にしてからポリシーを付与し、ドキュメントのコントロールを実施していた。今後はユーザーがプラグインをインストールすれば、PDF形式に変換しなくてもサービスを利用できるようになった。

 「そもそもPDFを利用しないユーザーもいますし、例えばWord、Exel、PowerPointで作ったドキュメントを、社外の人たちと協同で変更を加えながら作成するシーンで利用できないかという声が多数ありました。プラグインさえインストールしてもらえば、社外とのコラボレーション作業などもしっかりと安全を確保しながら、進めることが可能になります」と福嶋マネジャーは話す。

 確かに、複数の人が訂正を重ねながら、あるドキュメントを完成させていく作業では、配布するたびにPDF化してポリシーを付与するのも手間がかかる。PDFは直接テキスト編集をしたり、変更をすることも可能だが、こうした機能を利用できないユーザーも多い。MS Officeをそのまま利用できるようになることで、「ビッグローブドキュメントコントロールサービス」の利用範囲が広がっていく可能性は非常に高いといえる。文書には配布したら、基本的にはそれで終わりというケースと、何度もやり取りをしながらドキュメントの内容を変えていくケースがある。後者の場合は、やはりWord、Exel、PowerPointといったものを利用するほうが現実的だろう。

既存システムとの連携を低負荷で実現

 利用範囲の広がりという意味で、ドキュメントコントロールは既存の業務システムとの連携も始められている。WebAPIを使うことで、これまで考えもつかなかった利用方法が繰り出されるようになった。例えば、帳票だ。数百の相手先に帳票ファイルを送るとき、ドキュメントコントロールのポリシーを設定して配布したいというケースがある。そこで既存の帳票作成システムと「ビッグローブドキュメントコントロールサービス」をAPIで連携させて、安全に帳票を配布することが可能になる。

 既存のシステムと連携させるといったとき、システム側に何らかの改良を加えなければならないと、コストの負担がネックになってしまう。APIで連携させると、既存のシステムに手を加える必要がなくなり、安全な運用が可能になる。NECビッグローブでは、こうした帳票ツールや人事管理、ナレッジマネジメント、受発注管理などのシステムに連携させるプランを進めているという。

 「連携をすることで、あらかじめ特定のポリシー設定をしたフォルダにデータを入れるだけで、安全にファイルを管理できます。これには既存のシステムを改良する必要はありません。ファイルサーバーにポリシー設定をした共有フォルダを作り、そこにドキュメントを入れておけば、ポリシーが付与されたドキュメントが別の出力フォルダに蓄積され、それを閲覧者が利用する、ということもできるようになります。ナレッジマネジメントツールなどでも、社外の人たちと共有する情報がある場合があるので、ドキュメントコントロールについてのニーズは高いのです。このようにドキュメントコントロールに対するニーズは、多くのビジネスシーンで高まっています」と福嶋氏は語る。

 ドキュメントコントロールのレベルを上げることは、企業間の情報のやり取りに関する敷居を低くすることにつながる。企業間の連携は猛烈なスピードで進んでいる。隠すものが多い組織、大切な情報を守れない企業はこのスピードについていくことができない。そうした意味でSaaSによってドキュメントコントロールを実現する仕組みは今後ますます注目を集めるだろう。

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