エンターテインメント端末として注目されるiPhoneだが、最近ではビジネスアプリを提供するベンダーが増えている。米Oracleもそうしたベンダーの1社。同社が注力する理由を聞いた。
「iPhoneは新しいビジネスプロセスを実現する魅力的なデバイス」――近年、米Appleのスマートフォン「iPhone」に対応したビジネスアプリケーションを提供するベンダーが増えている。大手ではIBMやOracle、Salesforce.comなどがAppStore経由で自社製品と連携する製品を提供中だ。OracleでJ.D.Edwards EnterpriseOneとiPhone向けアプリケーションの開発責任者を務めるレンリー・ヘンセーリング氏に、iPhoneへ注力する狙いを聞いた。
―― スマートフォンのビジネス利用ではメールやグループウェア連携などが知られていますが、業務アプリケーションに対するニーズは高いのでしょうか。
ヘンセーリング氏 ビジネスに必要な情報を社外でもすぐに入手・利用できる手段として、スマートフォンは経営層ばかりではなく、現場に近い営業担当者やマーケティング担当者も受け入れられつつあります。
例えば営業担当者が顧客へ提出する見積書に対して上長の承認を得なければならいない場合、スマートフォンがあれば社外にいる上長からすぐに承認を得られるので、承認を待つ間に発生する機会損失を防ぐことができます。また、出張する際に事前に必要な書類を印刷して持ち歩く必要が無くなります。スマートフォンで必要な情報を移動中に入手して閲覧し、そのまま相手先に行くことができるわけです。
スマートフォンは、ビジネスプロセスの流れを止めないためのツールとして非常に有効です。ノートPCを使っていても、電源を入れてアプリケーションを起動するためには立ち止まって操作しなければなりません。
―― スマートフォンにはさまざまな種類がありますが、なぜiPhoneに注目するのでしょうか。
ヘンセーリング氏 iPhoneに限定しているわけではありませんが、iPhoneはほかのプラットフォームに比べてWebを介したサービスとの親和性が非常に高いと考えているからです。
iPhoneのアプリケーションはタスク志向が強く、必要な操作を瞬時に処理したいといったユーザーニーズに呼応できるアプリケーションを開発できるのが特徴です。実際、ユーザーからは必要な情報へ瞬時にアクセスできるツールを求める声が強く、われわれ自身もそのような手段を積極的に利用してほしいと考えています。
iPhone用の開発ツールでは柔軟に開発できる環境が提供されていることもあり、われわれがユーザーに使ってほしい機能を容易に実現メリットもあります。
―― どのようなアプリケーションがiPhoneに対応しているのでしょうか。
ヘンセーリング氏 これまでデータウェアハウス(DWH)やビジネスインテリジェンス(BI)との連携を進めてきました。ユーザーからは、契約書の承認や物品の調達、人材採用などの面でスピードを求めており、やはり情報を早く入手して処理したいといった声が数多く聞かれます。
対応する領域は順次広げているところです。
―― ユーザーからの反響はいかがでしょうか。
ヘンセーリング氏 例えばBIツールのAppStoreでのダウンロード件数は4万件に上っています。ほかの分野でも多数ダウンロードされており、予想以上に求められていることが分かったというのが正直な感想です。
Oracleの社員でもiPhoneの使用率は高く、わたしの周囲もiPhoneユーザーばかりですね。
――今後、どのような開発を計画されていますか。ヘンセーリング氏 具体的には明かせませんが、承認フローをさらに改善する機能や分析予想などの情報を活用できるような機能を目指しています。間もなくリリースされるiPhone OS 3.0では、ユーザーへのアラートをシステム側から配信できる機能が提供されますので、BIシステムで設定しているしきい値に達するとユーザーへ確認を促すといったことが可能になります。従来は、ユーザーがアクセスして確認しなければなりませんでしたが、今後はその手間が無くなります。
現在はiPhoneに重点を置いていますが、ほかのOSプラットフォームを搭載した端末でもWebアクセスが容易になったり、グラフィカル機能が向上したりしていますので、サポートするプラットフォームも広げていきたいですね。
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