改正薬事法で得をしたのはいったい誰なのかネットの逆流(19)(2/2 ページ)

» 2009年05月31日 16時41分 公開
[森川拓男,ITmedia]
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結局、これで得をしたのは誰なのか

 厚労省は、対面販売でないと薬のリスクを十分に説明できないという。確かに、薬には副作用や、組み合わせによるリスクはある。だが、それがイコール対面販売でないといけないということになるだろうか。そもそも、代理人による購入を認めている時点で、対面販売の一つの理由とされていた、購入者の状態を確認して適切な処方をおこなうという部分が崩れている。

 対面販売にこだわるのは、結局は既得権益を守るためではないか――。そう思われても仕方がないだろう。政治がしっかりしていればいいのだろうが、不安定な政局の中で、官僚に流されているのではないかという印象も受けてしまう。もちろん、政治家の中の、既得権益を享受する側の勢力も強いのかもしれないが。

 しかし、医薬品の電話やインターネットの通信販売規制について筆者が疑問に思うのは、新型インフルエンザのようなものが流行した時にどうするのかということだ。今回発生した新型インフルエンザに対して「不急不要の外出を控えるように」という話が出ているが、常備薬がなくなった時にどうするか。ネットなどの通信販売が使えれば購入できるが、規制されてしまっていれば、買いに出なければならなくなる。楽天の三木谷浩史社長も「新型インフルエンザのような問題が起きた時、薬局に買いに来なさいというのは逆効果ではないか」と指摘している。(編注:新型インフルエンザに感染した際に市販の解熱薬を摂取すると症状が悪化し、生命の危険が生じるケースがあるため、摂取を控えてほしいという指摘が医療関係者からありました。発熱の際は、新型インフルエンザなどの感染症である可能性があるため、保健所など地域の窓口に電話で相談してください)

 対面販売では薬剤師がいなくても登録販売者の資格を持つ人さえいれば第2類医薬品の販売ができる。しかし、電話やインターネット販売では、たとえ薬剤師がいたとしても第3類医薬品しか販売できない。果たして、ネット販売が原因となる副作用などの事故例が存在するのか。東京地裁への提訴でも、そのことが指摘されている。

 ネット販売が危険だというイメージ先行で語られてしまっている可能性はないか。確かに、最近報道されることが多かった若者の麻薬問題に関して、ネットから入手したというケースが多かった。しかし、それは今回の改正とは別問題だ。違法販売しているものに関しては規制を強化するなどすればいいし、その都度、摘発すればいい。

 このことで真っ当にやっている医薬品販売業者、そしてユーザーが不利益を被るのは納得できない。

 結局、多数の反対意見を無視した形で、改正薬事法と省令は施行される。いったい、このことで得をしたのは誰なのか。いったい、何のための改正なのか――。いま一度考え直してほしいと切に願うばかりである。

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