ECサイトでは、あらゆる手段を駆使してユーザーの実像をつかまなければならない。より深くユーザーを知ろうとする姿勢こそが、ネット上で生き残るキラーウェブを作り上げる。
ライバルがひしめくネットの世界を生き残っていくには、Webサイトを「キラーウェブ」に育て上げる必要がある。キラーウェブとは、何らかの要素で「一番」を持ち、それがユーザーに支持されているWebサイトのことを指す。本連載では、ECサイトを成功に導いた企業の試行錯誤を基に、勝ちパターンを探っていく。
バックナンバー
(2)ありふれた商品でもカテゴリーキラーになれる(ケンコーコム)
(3)「言葉の市場」を攻略するニッチターゲティング(ネットオフ)
(4)自社をメディア化する「Web情報武装」の正体(ゴルフダイジェスト・オンライン)
「選択肢が多すぎると、逆に選べない」――。実店舗における商品販売でよく言われることだ。商品数を増やしても、顧客の滞留時間が長くなるだけで、販売にはつながりにくくなる。自分の身に置き換えて考えると、とても納得できる。
このセオリーが必ずしも当てはまらないのがWebである。例えば前回取り上げたケンコーコムは、商品数と売り上げの相関関係に気付き、商品数を一気に増やすことに主眼を置いたことが奏功した。
検索エンジンがディレクトリ型からロボット型に変換する時期だったことも、同社の成長を後押しした。Web上では、すべてのページが「入り口」になる時代になったことで、商品数を増やすことが露出の増加に結びついた。
メディアの多様化によりマスメディアが影響力を低下させている昨今、注目を集めているのが「ニッチメディア」だ。これは、他社が進出していないすき間の分野をすくい上げたメディアのことを指す。特定の地域やテーマなどに特化したメディアの方が、マス的に露出するよりも、費用対効果の面で有利であることは間違いない。広告を出す場合は、よりニッチにターゲティングした方が、自社の商品を待っている消費者に接触する確率は高くなると考えるのが自然だ。
ニッチターゲティングでは現在、検索エンジンのキーワードごとに広告を表示させるリスティング広告がWeb上のプロモーションの標準である。キーワードは最もニッチなターゲティングであるといえよう。商品数が増えるに伴い、検索対象のキーワードが増え、Web上での露出も増えていくからだ。Webの時代になって突如出現した「言葉の市場」は、非常にきめ細かなマーケティングを要求している。
ケンコーコムが13万点強(2009年5月中旬現在のサイト表示による)の商品数ならば、今回紹介するネットオフが運営する中古書籍売買サイト「イーブックオフ」は、約100万点の書籍やCDなどを扱っている。Web上では、実店舗では取り扱えない商品数を掲載でき、「超ロングテール市場」を生み出す。ユーザーの価値観や趣向が多様化する中、それが大きな収益を生んでいる。100人中99人が見向きもしない商品でも、残る1人にとって価値があれば、それは商品になり、その集合体が市場を作る。
イーブックオフの約2200坪の商品センターを見れば、これらのひとつひとつが巨大な「ニッチ市場」を生み出していることを改めて実感し、驚きを感じる。ユーザーにとって、これらのタイトル(キーワード)が、すべて「入り口」になるのだ。
ネットオフがどんな経緯で事業を拡大させ、どのようにきめ細かなマーケティングを行い、自らのサイトをキラーウェブに育て上げたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.