自社をメディア化する「Web情報武装」の正体キラーウェブを創る(4) ゴルフダイジェスト・オンライン(1/4 ページ)

自社サイトをキラーウェブにするには、サイトを運営する企業そのものが「メディア」に変貌する必要がある。そのためには商品をさまざまな角度から徹底的に紹介する「情報武装」へのこだわりが不可欠になる。

» 2009年06月10日 08時00分 公開
[前野智純,ITmedia]

キラーウェブを創る

ライバルがひしめくネットの世界を生き残っていくには、Webサイトを「キラーウェブ」に育て上げる必要がある。キラーウェブとは、何らかの要素で「一番」を持ち、それがユーザーに支持されているWebサイトのことを指す。本連載では、ECサイトを成功に導いた企業の試行錯誤を基に、勝ちパターンを探っていく。

バックナンバー

(1)キラーウェブでなければ生き残れない

(2)ありふれた商品でもカテゴリーキラーになれる(ケンコーコム)

(3)「言葉の市場」を攻略するニッチターゲティング(ネットオフ)

(4)自社をメディア化する「Web情報武装」の正体(ゴルフダイジェスト・オンライン)

(5)商品の質こそがキラーファクターになる(オイシックス)

(6)Webと実店舗の共食いを超えた先(良品計画)


 広告展開や販売促進を実施する際に、さまざまなメディアを組み合わせる「メディアリンケージ」なくして今のプロモーションはあり得ない。メディアが多様化する中、広告や販売促進の対象を「面」で捉えた施策を講じないと、想定する客層にリーチできないからだ。

 メディアリンケージを試みるには、まずそれぞれのメディアの特性を理解する必要がある。例えば、雑誌やテレビとWebを組み合わせた施策を考える時、生活の中でそれぞれのメディアがどう機能しているのか、そのメディアはどのような状況で利用されるのか、どの情報に適しているのかを理解し、利用シーンのストーリーを想定する。

 雑誌の情報と同じ内容をWebに掲載するだけなら、リンケージは意味をなさない。また、会社案内のパンフレットとコーポレートサイトの中身がまったく同じというケースが散見されるが、これはWebを使って自社を「メディア化」する意識に欠けている典型例である。

 メディア化とは、企業自身がメディアになるという発想だ。特にWebの活用においてその意識を持つことは非常に重要である。そのためにはWebとほかのメディアの特性を理解した上で、ユーザーが求める情報を調査し、メディア企業としてコンテンツを作り続けることが求められる。

 初回で言及した通り、キラーウェブは「細分化」「深掘り」「ニッチな訴求」というプロセスの繰り返しを通じて育てていくものだ。向こう三軒両隣がすべて競合であるインターネットの中で、他社との差別化を図り、ナンバーワンになるためには、自社の強みを徹底的に磨くしかない。それができない企業は、Webにいくら投資をしても無駄に終わる。

ゴルフダイジェスト・オンラインのホームページ ゴルフダイジェスト・オンラインのホームページ

 今回紹介するのは、ゴルフ関連サイトでほかのサイトを大きく引き離すゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)である。同社のサイトに掲載されている情報をすべて見るには、どれだけ時間がかかるだろうか。恐らく、幕張メッセや東京ビッグサイトで開催される巨大な展示会のように、一日ではとても回りきれないほどの情報量を掲載している。

 同社はWebの特性を生かし、動画などのリッチコンテンツを多数掲載するなど、「圧倒的な情報武装」を行っている。その結果、老舗ゴルフ雑誌「週間ゴルフダイジェスト」のネット版という位置づけにはとどまらない、独立したメディアとして確固たる地位を確立している。

 前回紹介したネットオフも、前々回のケンコーコムも、ほかのメディアや店舗では不可能な商品数(コンテンツ量)を掲載している。これらのサイトは、Webの強みを自社の強みとし、徹底的にそれを生かしているという点で、キラーウェブの共通の要素を備えている。

 GDOはユーザーの平均滞留時間が21分以上に上るなど圧倒的な人気を誇る。その秘密に迫ってみよう。

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