現場で効くデータ活用と業務カイゼン
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» 2009年06月11日 08時00分 公開

原子力というインフラを支える:「現場の改善と同時にシステムを育てる」――FileMakerを選んだ日本原燃 (2/2)

[岡田靖,ITmedia]
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現場のためのデータベースと、工場全体を見渡す基幹システムとの連携

ジュッポーワークス Solutionマネジャー 永井求氏 ジュッポーワークス Solutionマネジャー 永井求氏

 脱硝課が運転管理ツールにFileMakerの採用を決定したのは2003年。翌年には試作を開始し、2008年には一通りの完成をみたという。

 一方、工場全体の基幹システムも、脱硝工程の運転管理ツールとは別に開発が進められていた。しかし、これは巨大なシステムだ。大きなシステムは一般的に、開発には時間がかかり、また工場全体で使うものだけに各部署での使い勝手は、いまひとつになりがちである。三浦氏らがFileMakerで脱硝工程の運転データベースを作り上げてきたのは、こうした基幹システムの宿命的課題を避けるためでもあった。

 とはいえ、工程ごとにバラバラのシステムを使うわけにもいかない。基幹システムは工場全体の運用に欠かせないものだ。そこで三浦氏は一計を案じた。

 「基幹系は他の部署と共通の、工場全体の基盤として利用するが、部門側ではFileMaker等のユーザビリティを重視したアプリケーションを使う、という使い分けを考えたのです」(三浦氏)

 こうして、脱硝工程の運転管理ツールは、工場全体の基幹システムとの連携を考慮した、部署レベルのシステムとして構築することになった。

 当然、そのためにはデータベース間の接続が欠かせない。現場が試験運転を通じてFileMaker上に作り上げてきたデータベースを有効活用するため、基幹システムのデータベースとを連携させ、BI等で利用することを考えている。連携にはFileMaker上のデータベースをオブジェクトベースへの構成変更など複雑な作業が必要だ。データベース構成変更は、蓄積したデータを部署内で活用するためにも必須だと分かった。

 「それまでは入力する側の利便性を重視して作っていましたが、BIを試用してみて分かったのは、活用しやすさを想定してデータベースを作ることも大切なのだという点です」(三浦氏)

 こうした作業のために外部のシステムインテグレーターへ委託することが決まり、いくつかのインテグレーターと接触した結果、最終的に株式会社ジュッポーワークスを選んだ。ジュッポーワークスはFileMakerの特性を生かすべく、顧客との打合せの際に要件定義から入るのではなく、まず画面構成を作成しデモンストレーションを行い、そこから顧客の要求を引き出すようにしているという。

 「顧客から依頼を受けてシステムを組み上げるのが、わたしたちの仕事です。しかし“作る”主体はあくまでもユーザー自身であり、その過程で技術面におけるお手伝いをするのが我々の役割だと考えています。今回のプロジェクトでも、ユーザーがイメージしている“開発プロセス”と、わたしたちの持っているノウハウとを、いかに融合させていけるかが成功への鍵であると実感しています」と、SIを担当したジュッポーワークス Solutionマネジャーの永井求氏は話す。

工場内での水平展開も視野に入れ、試行錯誤の経験も含めて社内に蓄積

 脱硝工程には2つのラインがあり、ウラン酸化物と、プルトニウムおよびウランを1:1で混合した混合酸化物の2製品を作っている。ジュッポーワークスの協力を得て脱硝工程システムと基幹システムとの連携が完了するのは、混合酸化物ラインが2009年末、ウラン酸化物ラインが年度末の見通しだという。

 「時間をかけた導入ですが、これはシステムを少し改善したら定着させ、その後にまた少し改善するというサイクルを繰り返しているためです。混合酸化物ラインを先行させているのも、その経緯をウラン酸化物ラインにも見せることで、すんなり導入できるようにするため。試行錯誤することも含めて、社内の蓄積になっています」と三浦氏は話す。

 実は、原燃がジュッポーワークスの協力を得て脱硝工程のシステムと基幹系システムの連携を図ったのは、工場内の他部署にも同様の構成を水平展開させるという考えもある。脱硝工程は粉体、液体、固体のいずれも扱う部署であるため、ここでの管理項目をほかの工程へ展開するのは難しくないはずだ。

 再処理工場は近く竣工を迎える予定だが、それで終わりではない。これから本格的な稼働が始まるのだ。現場で作り、改善し、それを周囲に展開するサイクルは綿々と受け継がれてゆく。

 「若手社員に対しても、FileMakerの教育を進めています。そして、前期に受講した者が後期に現場で、さっそく自分でデータベースを作るなどしています。普通のシステム開発はシステムインテグレーターの土俵の上で行われ、ユーザーの立場は弱いものですが、我々は使う側のメリットを重視していきたいのです」(三浦氏)

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