現場で効くデータ活用と業務カイゼン

「進化するのは、変化に強い種だ」――FileMaker Conference 2009導入事例(3/3 ページ)

» 2009年10月31日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
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クレームをチャンスに変える

日本ピュアフード 高橋徹氏 日本ピュアフード 高橋徹氏

 変化に対する即応性、という観点からFileMakerを選択したのは、続いて登壇した日本ピュアフードも同様のようだ。日本ハムの100%子会社であり、食肉加工を主事業とする同社では、主な業務部門は「営業/生産/管理」に分類できるという。その部門間連携は、「多くの企業同様、電話とファックス、そしてメールに頼っていた」と同社の高橋徹氏は振り返る。

 だが2002年、同社に大きな“ビジネス環境の変化”が訪れる。それは日本ハムグループの牛肉偽装事件である。時を前後して、海外および国内におけるBSE、そして鳥インフルエンザの発生もあった。

 こういった事態を受け、社内では商品カルテ、検査成績、産地証明……といった各種文書が、ワークフロー上に大量に追加されることとなった。販売店、問屋、消費者からの問い合わせも急増する。従来型の部門連携では対応しきれず、経営陣からは「現場は、仕事ではなく作業に終始している」との指摘も受けたという。

 オーバーフローしかけた部門間連携を円滑にするため同社では、FileMakerによる「ピュアフードコミュニケーションシステム(PCS)」の開発を決定。主な働きは、「クレーム対応」である。

 「開発に当たり、“クレーム”という言葉に対する意識改革を行った」と高橋氏。従来同社では、クレームの発生に対し“顧客の減少”というイメージを持つスタッフが多かったというが、それを“顧客の維持/増加につながるもの”と発想を転換した。結果、完成したPCSはクレームの発生をトリガーに、営業支援、受発注、販促、品質保証、生産管理、商品開発にまで対応および進捗が共有され、最終的には顧客/商品マスターとの連携も図られるものに仕上がった。

 従来では、クレームが発生し、営業側が生産側に対応を依頼しても、営業は「時間が掛かる、進捗も見えない」という不満を抱き、生産側には「調査に必要な情報が、営業から降りてこない」という悩みが発生することも多かったという。しかし現在は、処理をすべてFileMakerに乗せ、必要な情報はすべて入力、可視化させることで、営業によるヒアリング漏れや、生産側のチェックミスが改善されたという。導入当初は「システム化は面倒だ」という現場の声も大きかったというが、「今ではPCSをリモート環境やケータイからも利用したい」という声が上がるまでに浸透した。

 「PCS導入後、減少したクレームは半期で10件。この10件に、企業を揺るがしかねないトラブルがあったかもしれないと考えると、“FileMakerの導入効果は計り知れない”と経営陣からも評価されている」と高橋氏。「開発決定から本番稼働までは5カ月弱という短期間。同様のシステムをFileMaker以外で開発した場合、数10倍のコストが掛かっただろうと試算している。費用対効果は“無限大”だ」(高橋氏)

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