現場で効くデータ活用と業務カイゼン

「進化するのは、変化に強い種だ」――FileMaker Conference 2009導入事例(1/3 ページ)

10月30日、国内初となる「FileMaker Conference 2009」が開催された。最新バージョンであるFileMaker 10やBento 3の機能的特徴のみならず、ユーザー企業による「FileMakerで達成した業務改善」のリポートに聴衆は耳を傾けた――。

» 2009年10月31日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]

導入後も効果を拡大する「FileMakerサイクル」

ジェネコム 高岡幸生氏 ジェネコム 高岡幸生氏

 「システム導入効果の“天井を上げられる”」――こう話すのは、FileMakerによる開発、コンサル、トレーニングを手がけるジェネコムの高岡幸生氏。高岡氏は、ある企業にFileMakerをインテグレートした経験から、この知見を得たという。

 社名こそ明かされなかったが、「ある企業」では、関東圏の駅などでよく見かける自動改札機や券売機の機器メンテナンスや販売を手掛けているという。従来からERPパッケージを利用していたが、リース期限が迫ったことで、リースの延長か、あるいは新規開発するかを迫られることとなった。

 だがその企業では、従来のERPがパッケージであるがゆえに、「必要のない機能があったり、逆に必要な機能がなかったりという問題意識を有していた」と高岡氏は振り返る。理論上はカスタマイズも可能だが、時間やコスト、そして導入後に改修が必要になっても「自力でのカスタマイズが難しい」という観点から、リースの延長は見送ることに決めたという。

 そこで候補として上がったのが、FileMakerである。その企業では既に、ほかの業務でFileMakerによる合理化を行った経験があり、FileMaker(で開発するシステム)をERPパッケージの代替として利用するべく、検討を開始した。

 その企業では、開発会社であるジェネコムに声を掛けるとともに、自社内にFileMakerによるERP構築を目指す「プロジェクトチーム」を発足させた。プロジェクトチームは、各部門に対し必要な機能をヒアリングし、ワークフローを整理。その結果に基づき帳票の選別と組みなおしを実施した。

 このように、ビジネスの視点から策定した要件を、プロジェクトチームから開発会社ジェネコムに伝え、現実的にシステム化できる形に業務を棚卸ししつつ、FileMakerでの実装を進めたのだという。「要件策定(プロジェクトチーム)→開発方針検討(ジェネコム)→プロトタイプ開発(ジェネコム)→検証評価(プロジェクトチーム)→要件(再)策定→……」というサイクルを回したことが、ERPパッケージを利用し続けた場合の約4分の1のコストで、効果を期待できるシステムを開発できた要因だと高岡氏は評価する。

 「くしくも今回の開発サイクルは、“PDCAサイクル”と似ている。サイクルを回すことで、“望んだ機能になっていない”または“現実の業務に即していない”というSIにありがちな問題を防止できた。ユーザー企業においてプロジェクトチームが果たした役割は、とても大きなものであった」(高岡氏)

 高岡氏は「われわれも商売である以上、カスタマイズを依頼されたら対価を要求せざるを得ない」と正直に話す。だがユーザー側に、“ビジネス要件の変化に対応すべくカスタマイズしたいが、コストは掛けられない”というジレンマがあることも理解するという。そのためにジェネコムでは、FileMakerによるシステム開発とともに、ユーザー企業に対するトレーニングを重視している。

 今回もユーザー企業のプロジェクトチームに対し、開発トレーニングを実施したと高岡氏は紹介する。スキルを移譲するだけでなく、システムを改修する際のルールを策定し、改修したら開発会社(ジェネコム)と改修内容を共有する体制を作る。これによりユーザー企業に“カイゼンを自発的に考え、自ら実装する”意識が生まれ、結果として冒頭のように、システムを導入した効果の天井を上げられるのだと、高岡氏は紹介する。

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