カーデザイナーのワダサトシ氏、建築家の安藤忠雄氏、ファッションデザイナーの三宅一生氏など各界で多くの日本人デザイナーが世界中で活躍している。有名デザイナーたちだけの専売特許なのだろうか。彼らだけの思考パターンや行動様式なのだろうか。
最近、偶然仕事で奥山清行さんとワダサトシさんとご一緒させていただいている。奥山さんはポルシェ、フェラーリ、マセラティなどの名車のデザインを手掛けられた世界一級のカーデザイナーであり、現在では日本でケン・オクヤマデザインの代表として、自らのブランドでの「KO7」という自動車をつくり、日本のモノづくりや伝統を世界に羽ばたかせる仕事など数多くのプロジェクトをこなされている。
ワダサトシさんもカーデザイナーであり、出身はわたしと同じで日産自動車だが、日産を退職した後は、アウディのシニアデザイナーとして現行のシングルフレームグリルを作り、A6やA5などの名車を生み出した。最近はやはり独立されて、SWデザインを立ち上げた。
日本のカーデザイナーが世界の名車を設計しているわけだ。振り返ってみれば、クルマの世界以外でも、建築家の安藤忠雄氏、ファッションデザイナーの三宅一生氏など各界で多くの日本人デザイナーが世界中で活躍している。彼らの共通点は何か。
彼らはクルマや建築、ファッションなどでクライアントのブランドづくりに貢献しつつも、自分のブランドを築き上げている人物たちだ。「Designed by 誰々」と識別される存在だ。
彼らには、
などなど多くの共通点がありそうだ。なんと大きな仕事の流儀だろう。さすがは世界を舞台にしている有名人は違う、と思われる読者も多いだろう。しかし、よくよく考えてみると、このことは彼ら有名デザイナーたちだけの専売特許なのだろうか。彼らだけの思考パターンや行動様式なのだろうか。
実はわたしたちも皆同じである。わたしたちも良い仕事をするためには、上記のような仕事の流儀が必要だ、と少なくとも会社から言われてはいないだろうか。そこで思うのは、違うのは「実行できるか」だけなではないかということだ。
あまり堅苦しく考えると、評価基準や育成基準に書いてあるかどうかという話になってしまって面白くないので、ここは自分のこととして考えてみよう。そこで質問だが「自分にとって良い仕事とはなんだろうか」「自分がやりたいことって何だろうか」「自分はなぜこの会社、この仕事に就いているのか」このような疑問を読者の皆さんは持ったことがあるだろうか。
彼らが追いかけているのはこうした自分らしさの追求であると考える。その過程で、上記のような仕事の流儀が自然に編み出され、成功の方程式のようになって表出化されている。それは特別なことではなく、自分のやるべきことだと信じる事柄に食らいついていく姿勢そのものであり、結果としての産物なのだ。それゆえ、特別な能力を持つ人だけではなく、普通のビジネスマンにとっても真実の瞬間なのだ。
違いは、彼らはそれに命を賭けてひたすら努力している点だ。奥山さんの著書『人生を決めた15分。創造の1/10000』のタイトルにもある1/10000とは、1万枚のデッサンで初めて1枚の完成が得られるということだそうだ。ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正CEOも「ビジネスは1勝9敗」であり、簡単には成功しないとしている。本当に自分の信じるところをとことん努力し、賭けてやっているか、その違いが成功を生むのだ。
このように考えてくると、最も重要なのは自分の原点へのこだわりであり、それが結果として自分のスタイル、他者とは違った大きな仕事の流儀を生み出すわけだ。そして自分ブランドになっていく、そんな流れを作っていくことが大切だ。
わたしたちは「自分ブランド」にもっとこだわらなければならない。暗くて辛い職場では、よく「達成感がない」ということがささやかれるが、達成感は何かにチャレンジしなければ決して生まれることはない。達成感は与えられるものではなく、自分の内側から作り出すもののはずだ。そのためにも達成感に通じる自分の原点をしっかり持つことが重要になる。
人事部は評価基準でそれを示そうとするが、いくらあるべき行動を示されても、もともとそういう原点がなければ、行動は起きてこない。起きたとしても形だけだろう。それが世の評価制度がうまくいかない理由だ。むしろ答えは1人ひとりの中にある。
彼らの人生に関する情報は、メディアからも収集できる。他人の生き方から自分のブランドづくりを考える、そんなワーキングライフを始めてみよう。そして部下にも示していこう。きっと元気な職場ができるはずだ。
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