ソフトベンダーの新たな稼ぎ方サイボウズLiveの可能性(2/3 ページ)

» 2009年12月03日 08時20分 公開
[藤村能光,ITmedia]

要望に真摯に応えることで、ユーザーが集まる

 一方で収益化を急務とはとらえていない。「当面は短期的な黒字化よりも、利用者の支持を集めるサービスの開発を続ける」と丹野氏は話す。利用者の母数が増加すれば、有償サービスの活用も増すというWebサービスの特性を見込んでいるからだ。

 幅広く活用してもらうWebサービスを開発するには、使い勝手や機能に対する利用者の要求を細かく改善していくことが不可欠だ。そこでβ版としてサイボウズLiveを提供することで、改善要望(フィードバック)を広く集める。これを基にサービスに磨きを掛け、利用者増を狙う。

 「(試験運用で)特に多かった要望はサイボウズのグループウェアやGoogleカレンダーとの連動だ」。丹野氏はユーザーの声を紹介する。これに対し、「サイボウズ Office 8」に入力したスケジュールとサイボウズLiveを同期させる専用ソフト「サイボウズLiveシンク for Windows」の提供を既に開始している。これをPCにインストールすれば、Office 8の予定をサイボウズLiveに吸い上げられる。Googleカレンダーに対応した専用ソフトも正式版の公開時に向けて開発を進めている。

 同期した予定は本人のみが閲覧でき、サイボウズLiveで作成したグループの参加者は閲覧できない仕様になっている。一方で、空き時間や予定がある時間のみをグループのスケジューラー上に表示させることは可能。社外とのやり取りにおける情報漏えいを考慮した作りになっている。今後は、サイボウズLiveに入力した予定をグループウェアに反映させるという逆方向の同期もできるようにしていく。

 一方で開発部門がこだわり続けた機能もある。利用者を検索する機能だ。サイボウズLiveでは現在、メールアドレスでしか利用者を検索できない。Webサービスとして活性化しないのではという声も挙がっていたが、この機能は残していく見通しだ。「(自分に関連する)ユーザーを一通り見つけると、サービスを使わなくなる」といったケースを想定し、グループをハブにして利用者の輪を広げるといった使い方を主眼に置いている。丹野氏は「グループとひも付いたユーザーの拡大が肝だ」と強調する。

 「インターネット上にWebサービスはたくさんある。だが常に使ってもらえるように“習慣化”させるのが難しい。ユーザーに支持されないとビジネスも何も始まらない。Webサービスで利益を出すには、誰もが使えるサービスを提供する必要がある」(丹野氏)


 今後は「100万人を通過点として、サイボウズ(製品)のユーザー数である300万人の利用を目指したい」と丹野氏は意気込む。

 同社はWebサービスを無料で公開してサービスの改良につなげ、利用者の拡大と有償サービスの活用を結び付けるという戦略を採った。「業績を10倍、100倍にするには、(パッケージ製品の開発といった)これまでとは異なるアプローチが必要だ」。丹野氏の言葉は、サイボウズLiveが同社の新たな収益源を確保するための試金石になることを示している。

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