Oracle、「欧州委員会の承認を得るためMySQLで妥協」との報道を否定(2/2 ページ)

» 2009年12月08日 11時28分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK
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MySQLは「別組織」に――Postの情報筋

 Postの記事は「エリソン氏は現在、12月10日の欧州委員会での審理の前に買収を完了させるために、OracleとSun合併後の新会社の中に、SunのオープンソースデータベースソフトウェアであるMySQLの事業を担当する別組織を設立してもいいと考えている」と述べている。

 Mlexの創業者で同社の編集長を務めるロバート・マクラウド氏は、ブリュッセルのオフィスでeWEEKの取材に応じ、「Postに情報を提供した人が誰であれ、この部分の記述は、その人が内情を知らないことを示している」と語った。Mlexは市場情報を専門に扱うコンサルティング会社で、国際的な法規制問題に関してさまざまな利害関係者にアドバイスを提供している。

 「たとえOracleが極めて包括的な是正策を明日提出したとしても、欧州委員会は年末までに決定を下せる状況にはないだろう。まして12月10日までにというのは、とても不可能だ」とマクラウド氏は話す。「記事の情報は間違っており、その情報筋というのは委員会での作業にまったくかかわっていない人間だ」

 27カ国で構成される欧州連合(EU)の司法機関としての役割を果たす欧州委員会は来年1月27日に、OracleによるSunの買収を認可するかどうかの決定を下す予定だ。買収が認可されれば、Oracleは欧州で引き続き事業を行うことができる。

 SunはMySQLのコードベースを所有しており、同データベースの国際的コミュニティーを運営している。MySQLはオープンソース分野でOracleの最大の競争相手だ。Sunは2008年1月、MySQLを約10億ドルで買収した

 MySQLは欧州生まれのデータベースで、企業のWebサイトの運用で重要な役割を果たしている。

 欧州委員会で競争政策を担当するニーリー・クロエス委員をはじめとする当局担当者らは、Oracleがこのような人気の高い競合製品(MySQLのインストールベースは推定で600万〜2000万ユーザー)を所有すれば、その開発が停滞したり中止になったりする可能性があるとの懸念を抱いている。

次のステップは12月10日の審理

 Oracleは12月10日に、Sunを買収しても企業向け並列データベースの世界市場に実質的な影響が及ぶことはないと委員に主張するチャンスがある。

 エリソン氏は以前から、MySQLはOracleのプロプライエタリデータベースと直接競合しないと繰り返している。また同氏によると、Sunの新規・既存顧客が同社の将来がはっきりするまで購入を手控えているため、Sunは1カ月に付き1億ドルの販売機会と数千人の雇用機会を失っているという。

 MySQLの元株主で戦略アドバイザーだったオープンソース活動家のフロリアン・ミューラー氏はeWEEKの取材で、「Post記事で報じられたソリューションをOracleが本当に提案したとしても、MySQLの作成者であるマイケル・“モンティ”・ウィデニウス氏、そして同データベースの開発コミュニティーには不満だろう」と電子メールで述べている。

 「これがOracleの提案だとすれば、MySQLのユーザーには絶対に受け入れられない。なぜならMySQLに必要なのは、Oracleのコアビジネスとの競争を促すインセンティブに満ちあふれ、その点に関して一切の制約がなく、資金面で同データベースを支える組織だからだ」とミューラー氏は語る。

 「一切の束縛がなく、あらゆる手段を通じてMySQLの成功、発展、イノベーションを真に望んでいる組織が必要だ。トラのきばを抜いて、おりに閉じ込めてはならない」(同氏)

 Oracleはこの事業に大量の資金(74億ドル)と時間を投入しようとしており、買収が完了すれば、カリフォルニア州レッドウッドシティに本拠とするエンタープライズデータベースとミドルウェア企業である同社は直ちに、世界のITシステムプロバイダーとしてトップ10の仲間入りをすることになる。

 欧州委員会はこの件で大きな影響力を持っている。OracleはほとんどすべてのEU諸国で製品を販売しており、委員会が買収を承認しなければ大量のビジネスを失う恐れがあるからだ。

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