インドの伝統産業にもクラウドの波

中堅・中小企業に向けて多岐にわたるクラウドサービスを提供しているZOHOは、同社の開発拠点であるインドにおいて売り上げを急速に伸ばしている。

» 2011年02月07日 11時02分 公開
[伏見学,ITmedia]

 プロジェクト管理やCRM(顧客情報管理)、表計算、文書作成などのクラウド型サービスやネットワーク管理製品を提供する米ZOHO Corporationは、サービス開発や営業などの主要機能をインドの拠点に集約している。日本では2007年ごろからサービスや製品のローカライズ(現地化)を進めており、今年から本格的なマーケティング活動を開始する。

ZOHOのプロダクト・マネジメント・ディレクター、ハイザー・ニザム氏 ZOHOのプロダクト・マネジメント・ディレクター、ハイザー・ニザム氏

 ZOHOがターゲット顧客にしているのが、中堅・中小企業(SMB)である。クラウドサービスは、導入コストや運用コストがオンプレミス型のシステムと比べて抑制できることからSMBとの親和性が高いとされているが、実際にZOHOではインド市場における利益の90%をSMBから上げているという。同社でプロダクト・マネジメント・ディレクターを務めるハイザー・ニザム氏は「(ホストコンピュータなどの)レガシーシステムを抱える大企業に対して、SMBはしがらみなくシステム移行できるため、一度決まればクラウドを採用する動きも早い」と強調する。

 特に同社のクラウドサービスは、IT部門の手を煩わせることなくビジネス部門が導入、利用できる点や、基本的なサービスを無料で提供する「フリーミアムモデル」を採用しているため、例えばベンチャー企業など少人数のオフィスであればコストを掛けることなく活用できる点も採用の拡大を助長しているという。

 インドにおいてはSMBのIT投資に対する意欲が強く、これまでITとは縁遠いような伝統的な産業においても、社員の生産性向上を目指してIT活用に力を入れる機運が高まっているという。

 例えば、「ビディ」と呼ばれるインドの庶民向け巻きたばこを製造、販売するBharath Beedi Worksは、ZOHOの「オンラインCRM」を導入してコスト削減と業務効率化を実現した。この産業では多くの企業がいまだに紙ベースで業務を運用する中において、同社はいち早くIT化に取り組んでいる。

 同社ではこれまで、Excelとオンプレミス型のCRMアプリケーションを組み合わせて顧客情報などを管理していたが、営業担当者がばらばらにデータを入力、更新するため、分析作業に課題を抱えていた。オンラインCRMを導入したことで、案件や顧客の最新情報をリアルタイムで把握できるようになったほか、1つのデータベースに情報を統合するため、正確な分析が可能になった。

 コスト面でも大幅な改善が見られた。従来のシステムでは、営業担当者5人に対して月額2500ドルのITコストが発生していたが、オンラインCRMに移行したことで月額600ドルと、約4分の1のコストに抑制できたとしている。

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