IBM東京ラボが本格始動、「売上重視」とイェッター社長が言及

R&D機能が大和事業所から都内に完全移行した。社長就任から2カ月が経過するマーティン・イェッター氏が会見に応じ、経営戦略や現状をコメントした。

» 2012年06月15日 16時50分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 日本IBMは6月15日、東京都江東区の豊洲事業所で「IBM東京ラボラトリー」の開所式を開催した。神奈川県の大和事業所の研究・開発機能が完全移行され、産学官連携を重視する新たな開発体制を推進していく。

 IBM東京ラボラトリーは2011年7月に開設。約1年を掛けて大和事業所からの機能移転が完了した。

 開所式には、同社からマーティン・イェッター社長、橋本孝之会長、久世和資執行役員(研究開発担当)らが、来賓として米IBMのジョン・ケリーシニアバイスプレジデント リサーチディレクター、東芝の須藤亮執行役員、日産自動車の山下光彦福社長らが出席。

「IBM東京ラボラトリー」の開所式

 イェッター氏が「新たな研究開発拠点が社会に貢献するものと期待している」と述べたほか、久世氏はパートナー企業や大学、行政機関などと連携した研究開発を進めていく方針を表明している。


 開所式後にイェッター氏が報道陣との質疑に応じ、社長就任から2カ月が経過しての所感やIBM東京ラボラトリーなどについて、報道陣に対して次のようにコメントした。

就任後の所感について語ったマーティン・イェッター社長

―― 自動車や製造などグローバル市場重視の企業顧客と内需型の企業顧客に対するビジネスについてはどう考えていますか。

イェッター 就任後に約70人の企業トップに面会して、規模を問わず多くの日本企業のグローバル化が進んでいると感じました。IBMは企業規模に関係なくこうした企業を支援するつもりです。内需主導型企業も同様です。そのために日本に拠点があり、約2万人の社員がいるわけです。

―― 移転によって、経営と研究開発の2つの面からどのような効果があると考えていますか。就任してから人員削減を進めているとの話がありますが、実行しているのですか。

イェッター これまで外部と協業するというより社内中心で行われてきました。現代は技術革新が、発明と研究と市場とが融合する場所で起きると私は考えています。顧客に近い場所にいることが重要ですので、研究開発の場を東京に移したわけです。(合理化の)話題は当社から出したものではないので、話題にした方に確認してみてください。

―― どのくらいの人員が移転しましたか。減少したのですか。

イェッター 東京に来る社員もいますし、移転を契機に新たなチャンスに挑戦する社員もいると思います。またもう1つの移転理由ですが、例えば東京大学は著名な学術の場で、都内にあります。IBMが成長、拡大するには新しい人材との交流が欠かせません。それができる場所(都心)に拠点を置く必要がありました。

イェッター 当社は成長したいと考えています。想像に難くないと思いますが、東京は最も地価が高い都市ですから、コスト削減にはなりません。

―― 5月に来日したスティーブ・ミルズ氏(米IBM シニアバイスプレジデント兼グループ・エグゼクティブ)は、利益の半分を稼ぐソフトウェア事業を2015年には65%にしたいと表明しましたが、日本IBMとしてはいかがですか。

イェッター 日本はサービス重視の市場と捉えています。CEOの多くがテクノロジーに期待していることも分かりました。今は第三のコンピューティング時代に入りつつあります。第一の時代は計算、第二の時代はプログラムの実行でしたが、第三の時代はコンピュータが人間のように言葉を理解し、学習して新たな価値を創造します。データを通じて社会を見通すことが必要である、そのための知見が東京に集積しています。これからは4つの“V”(volume=量、velocity=速さ、variety=多様性、veracity=真実)が大切になってきます。

―― 日本の研究開発テーマの中で、イェッター氏が世界に通用すると期待しているものは何でしょうか。

イェッター 日本は高齢化社会なので、高齢者のアクセシビリティを高めたり、ニーズを満たすためにITで支援するといったことがあるでしょう。世界が日本から学べることはたくさんあると思います。開所式でも触れましたが、企業との共同プロジェクトが数多く進んでいきます。その中心のコンセプトがスマートシティ、スマートプラネットというわけです。

―― 今の日本IBMに足りないものは何ですか。売上と利益のどちらを重視しますか。

イェッター 利益を増やすには売上を増やさないといけません。ですので、足りないのは売上です。

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