この1月にパルミサーノ氏からバトンを受け継いだジニー・ロメッティ新CEOは、就任早々から将来の方向性を明確に打ち出してきた。CEOとして初めて臨んだ2月の「PartnerWorld」(ルイジアナ州ニューオリンズ)では、「わたしのすべきことは変わらない。成長とそのためのハイバリュー領域へのシフトだ」と話し、「コンピューティングの新しい時代」(New Era of Computing)を切り開きたいとした。
ロメッティ氏に言わせれば、使われている技術やサイズの違いこそあれ、コンピュータにはこれまで2つの時代しかなかった。1950年代までの集計マシンの時代と、それ以降のプログラム可能なシステムの時代だ。どちらもIBMが市場を牽引してきたのは言うまでもない。
この日のステージでもロメッティ氏は、「今後はすべてのモノが(生産工程のように)計装化され、ネットワークに接続される。瞬く間に生み出される膨大かつ多種多様、そして不確実さの入り混じったビッグデータを処理するには自然言語を認識し、学習してくれるコンピュータが求められる」と話した。
昨年、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」でIBMのコンピュータがクイズ王を打ち負かして話題となった。司会者の読み上げる問題を理解し、大量の情報の中から適切な回答を選択、素早く答えなければならないため、書籍100万冊相当のテキストを読み込み、3000個近いPOWER7プロセッサで処理する。ラックは10本に及ぶ大掛かりなシステムだが、将来は医療から顧客対応のコールセンターなど、幅広い分野に応用できると期待されている。IBMはこの画期的なコンピュータに同社の創立者である「Watson」の名を冠した。
「Watsonの処理は医師の仕事と似ている。大量のデータから異常を特定し、有効な治療を施す。Watsonならより多くの診断を迅速に行える」(ロメッティ氏)
CEOとともに来日したソフトウェアソリューション部門を統括するマイク・ローディン上級副社長は、Watsonをはじめ、Smarter Analytics、Smarter Commerce、Smarter Cities、Social Businessといった同社の高付加価値ソリューションには、その背後に共通のコアコンセプトがあると説明する。
「物理世界は急速に計装化されつつある。生み出されるビッグデータをリアルタイムで分析し、“パターン”を見つけ出せば、将来を予測し、すぐに適切なアクションにつなげられる」(ローディン氏)
意思決定が変わり、仕事や生活の在り方も大きく変わるに違いない。
ロメッティ氏は、「わたしは将来を楽観視している。技術基盤が整い、新しいCognitive Computing(学習するコンピューティング)が実用の段階に入った。そして、この新しい世代のコンピューティングを積極的に活用しようというリーダーが現れているからだ」と話す。
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