2013年新春インタビュー

Will to Winの精神 日本HP・小出社長2013年新春特集 「負けない力」(3/3 ページ)

» 2013年01月07日 08時00分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]
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Will to WINの気概

―― 2013年の国内市場をどう予想しますか。

小出 マクロ経済としては良い方向に行くだろうと期待しています。ただ、それがIT投資にも行くかというのは別の観点になりますので、楽観はしていません。恐らく2013年後半は良い方向に行くでしょうが、多少の成長はあっても、昔のような右肩上がりの成長では無いでしょう。お客様の成長に伴って、投資先の1つとしてITも成長していくのではないかとみています。

小出社長 福島県須賀川市出身の小出氏。東日本大震災では甚大な被害を受けたが、復興を人一倍望んでいる

―― 重点領域は。

小出 1つはクラウドです。それもコスト削減というよりは、攻めの経営に向けた積極的な活用の広がりが期待されます。もう1つはビッグデータです。デジタルデータが指数関数的に増大している今、お客様はデータを価値あるものに変えてビジネスに使いたいと考えています。その意味でビッグデータとクラウドが並行して拡大していくでしょう。そうなると、今度はセキュリティの問題が起こりますので、これを解決しなくてはいけません。「クラウド」「ビッグデータ」「セキュリティ」の3つは常に一緒に動く関係です。

 また、日本ではエネルギー問題も避けて通れないものになりました。電源をどうするかにしても、省エネ問題は必ず伴います。スマートメーターやスマートグリッドなど、電力の安定化を、国を挙げて取り組まなくてはならなくなる日本の電力事情をIT側がどう支えていくかが2013年のテーマになるでしょう。

 当社としてもこの領域に既に取り組んでいますし、実績も出ています。2013年はスマートシティ、フューチャーシティというものに対するソリューションを提供することが、われわれが使命の1つだと思います。

―― ご出身は福島県ですが、東日本大震災の復興の現状についてどう感じていますか。

小出 震災直後は何度も実家に足を運びました。多くの家で屋根にビニールシートが張られ、道路には亀裂が走っていました。今ではそういう物理的な被害の復旧はだいぶ進んできましたが、単に元の姿へ戻すというだけでは復興ではないと思います。これだけの大きな被害を経験したわけですから。元の姿ではなく全く新しいものに作り替えることが必要でしょう。残念ながら、今もそれはあまり進んでいません。

 新しいものを創生するということはとても大切で、海外の国でも今あるものを作り変えなくてならない時期を必ず迎えます。その時、今の日本の経験は必ず世界から求められるはずですし、日本がグローバルでリーダーシップを発揮できるようになると期待しています。ですので、国も民間企業も新しいものを生み出すという発想に立ち、一丸となって復興を進めるべきです。「とりあえず元に戻った」と感じている人もいますが、現実には福島県では原発問題を抱えてながら元にも戻っていません。とにかく、新しいものを創造するという取り組みを、国を挙げてもっとやるべきだと感じています。

―― HPの仙台営業所の再建では地元の期待も大きいようです。

小出 開所式には奥山恵美子 仙台市長にもお越しいただきました。地域の皆さんのITへの関心は高く、熱心に取り組まれています。今は何か新しいことを始めるにしてもITが必要です。ただITを活用するにしても、今回の震災ではシステム自体が無くなってしまうこともありました。実際に私の町でも役場が崩壊しました。元の姿では無く新しいものを作るべきと話しているのは、元の姿ではまた同じことを繰り返してしまい兼ねないからです。事業継続のためにクラウドを活用するといった、50年先、100年先も安心のものは、今こそ作るべきです。本来は始めの段階で将来のコンセプトやアーキテクチャを作り込んでいくべきですが、ようやく今になって取り組めるようになってきたと思います。

―― 改めてHPの「負けない力」をお聞かせください。

小出 震災で感じたのは、日本HPはお客様フォーカスの企業だということですね。原発が危ないというのに、多くの社員が被災したお客様のシステムやパートナーの復旧を応援しに行きました。とかにかく、お客様、パートナー第一という精神なんですね。もう1つは、HPの2人の創業者が掲げたベンチャースピリットです。新しいものにチャレンジしていこう気持ちが強くあります。

 HPがほかのITベンダーと違うのは、M&Aの歴史を持つ点です。CompaqやTandem、EDSなど多く企業と一緒になり、今では30万人の社員がいますが、その7割はHP以外のDNAを持つ人々です。多様性に富んだ会社ですし、そういう多様なDNAが融合し大きな化学反応を起こせる。こういう企業は他には無いと思います。

―― 「負けない力」をひと言で表現していだだけますか。

小出 Will to WIN! ですね。

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